学生時代の私は、明確な将来像があったわけではなく、「自分が面白いと思うほうへ進む」という自然な選択をしてきた気がします。
応用物理から原子力、そして冷熱の世界へ——。振り返ると分野の振れ幅は大きいですが、その時々で湧いてきた興味や“しっくりくる感覚”を手がかりに進んできた結果、今の仕事にたどり着きました。
大きな決断よりも、小さな選択の積み重ねが今の自分をつくってきた。これは、そんな私のキャリアの歩みです。
私は幼い頃から科学への興味が強かった一方で、文系科目にはあまり自信がありませんでした。好きなことに時間を使うほうが性に合っていたので、理系科目に惹かれていくのは自然な流れでした。
もう一つ、進路を後押ししたのは中高の環境です。私が通っていた学校は理系進学者が多く、医学部を目指す同級生もたくさんいました。ただ、医師を目指したわけではありません。親から医学部を勧められた時期もありましたが、自分自身が本気で“医療に携わりたい”と考えたことはなく、それよりも工学の世界やモノづくりのほうが、自分の興味に素直に合っていたのだと思います。

進学した早稲田大学の先進理工学部では、応用物理を専攻しました。授業が進むにつれ「少し理論に寄り過ぎているかもしれない」という感覚がありました。物理そのものは好きでしたが、もう少し手を動かしながら理解していくほうが、自分には合っているのかもしれないと感じたのです。
その気づきが、大学院で原子力専攻を選んだ理由の一つです。実験を軸に学べる環境で、現象を自分の目で確かめながら考える時間が増えました。設備の前で計測器を扱う時間が多く、地道な作業の連続でしたが、手を動かしながら試行錯誤する進め方は自分に合っていると感じました。
この経験を通じて、自分が理系の中でも“工学的なアプローチ”に惹かれていることに気づきました。その実感は、後の就職活動の方向性を決める手がかりになりました。
就職活動では、原子力分野に限らずさまざまな企業を見るようにしていました。研究室の先輩の進路が幅広かったこともあり、「専攻に沿った業界だけにこだわらなくてもいい」と考えていたのです。
三菱重工に興味を持つきっかけになったのは、大学院1年のときに参加したインターンシップでした。事業紹介の中で、冷熱事業について詳しい説明を受けたのですが、そこで初めて“熱を扱う技術の幅広さ”を知りました。家庭用の空調だけでなく、産業用設備や大型機器まで、低温から高温まで多様な温度帯を扱い、国内外で幅広く使われている領域だという話が特に印象に残っています。
また、「熱」というテーマそのものが、原子力分野の研究で扱ってきた内容に通じるものがありました。専門としては遠いように見えても、熱の移動や流れといった基本的な物理現象は共通しています。分野が変わっても、自分の学びを活かせる余地があると感じた瞬間でした。
さらに、海外にも製造拠点やサービス拠点を持つ事業であることを知り、自分の海外志向とも重なりました。文化や基準が異なる市場に向けて製品が届けられていることを知り、「ここでなら視野が広がりそうだ」と思えました。
こうした気づきが重なり、冷熱という分野に惹かれる気持ちが自然と強まっていきました。

入社後は品質保証部のサービス部門に配属されました。業務用空調機に関する販売会社からの技術的な問い合わせへの対応や、故障により交換し返却された機器・部品の調査、現地での確認など、実際の使用環境に触れる場面が多い部署です。
業務の中で特に印象に残っているのは、「技術をどう伝えるか」を考えることが多かった点です。トラブル原因や対処方針を説明するときには、専門的な内容をそのまま伝えるのではなく、相手が理解しやすい言葉に置き換える必要があります。何を心配しているのかを想像しながら説明すると、納得してもらえる場面が増え、「丁寧に対応してくれて助かりました」といった声をいただけることも多くあり、自分の関わり方が安心につながったと感じられる瞬間でした。
サービス部門での経験を通じて、技術の知識だけでなく、「使う人の立場から物事を捉える感覚」が身についたと思います。この感覚は、後の品質管理の仕事でも土台になりました。
サービス部門で4年間の経験を積んだ後、品質管理課へ異動しました。ここでは開発段階の製品に関わる機会が増えました。サービス部門が“お客様のもとで起きた事象に対応する立場”だとすれば、品質管理は“製品が世に出る前に問題が起こらないように備える立場”。仕事の角度が大きく変わりました。
サービスとは異なる立場で製品に向き合うようになると、関わる部門も、求められる視点も大きく広がりました。設計・製造・研究など多くの部署とやり取りしながら品質を検討していく中で、「同じ製品でも、見る角度が変わるとこんなに違って見えるんだ」と実感する場面が多くありました。サービス部門で培った“使う人の感覚”は、この場でも役に立ち、実際の現場で起きやすい状況を踏まえて話すことで、議論が前に進みやすくなりました。
新しい環境での学びは多く、視野が広がっていく感覚がありました。サービスと品質管理、その両方の経験が重なったことで、製品全体をより立体的に捉えられるようになってきたと思います。
三菱重工という名前から「堅い会社」「年功序列」というイメージを持たれることもありますが、実際にはフランクなコミュニケーションができる職場です。20〜30代のメンバーが多く、業務で迷ったときには気軽に声をかけあえる距離感があります。
また、学んだことを次の業務にすぐ生かせる環境が整っていることも大きいと感じています。三菱重工グループには「シェアードテクノロジー」の仕組みがあり、専門知識を社内で共有する制度や研究所の講師による講座など、学ぶ機会が幅広く用意されています。私自身もこれまでに25講座を受講し、必要だと思う知識を自分のペースで身につけることができました。
分からないことがあれば、周囲に相談して一緒に考えることができる。学びたい分野があれば、自分で手を挙げて取りにいける。そんな環境があることは、若手にとって大きな後押しになると感じています。

私生活とのバランスを取りやすい環境があることは、働き続けるうえで大きな支えになっています。年度初めに休暇や研修の計画を立て、業務の見通しを持ちながら、自分の時間を確保できます。
子どもが産まれてからは、当社の働きやすさをより実感するようになりました。社宅が職場の近くにあるため、朝は幼稚園の支度をしてから出社でき、退勤後もすぐに帰宅して家族との時間をつくれます。急な通院が必要なときなどは、在宅勤務や中抜けの制度で調整でき、状況に合わせて働き方を選べる安心感があります。
課内には家庭を持つ社員も多く、育児休業やフレックス制度を活用しながら働く人が身近にいます。日頃から業務状況を共有し、必要に応じて支え合う風土があるため、家庭との両立に不安を感じることはありません。
もともと海外で働くことへの興味があり、今もその思いは変わりません。現地の工場や代理店の方々とやり取りすると、文化や市場環境が違う中で製品がどう受け止められているかがよく分かります。国が変われば求められる基準や価値観も変わるため、その違いに触れるたびに視野が広がっていくのを感じました。
将来的には、家族と海外で生活しながら、現場に寄り添うサービスの仕事にもう一度関わりたいと考えています。サービスと品質管理の両方で得た経験を生かしながら、海外でも通用する力を身につけていきたいと思っています。

これまでの選択を振り返ると、大きな決断をしてきたというより、その時々で「自分にしっくりくるほう」を選んできたように思います。あとになって気づくことも多いですが、そうした積み重ねが今の仕事につながっています。
就職活動でも、働き始めてからも、最初からすべてが明確に見えている必要はないと思います。興味の向くほうに少し踏み出してみることで、新しい視点に出会えたり、自分でも意外だった方向に広がりが生まれたりすることがあります。
もし進路に迷うことがあっても、「こうしないといけない」と思い込みすぎずに、自分の感覚に耳を傾けてみてほしいです。どんな選択にも、その後につながる意味があると思います。その意味に気づく瞬間は、案外ずっとあとになってふと訪れるものかもしれません。
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