これまでのITインフラ運用は、限界を迎えつつある。その課題に、私たちはAIと長年の知見で向き合う。
キンドリルジャパン株式会社
デリバリー・モダナイゼーション
バイスプレジデント
堀
銀行の振り込みができる。
工場の生産ラインが動き続ける。
スマホのアプリが、途切れず使える。
私たちは普段、こうした「止まらない社会」を当然のものとして暮らしています。
しかし、その裏側では、ITシステムが複雑になり、障害対応は年々難しくなっています。
“止まらない”を支える仕事は、いま大きな転換点を迎えています。
この課題に向き合うために生まれたのが、AIを活用したプラットフォーム「Kyndryl Bridge(キンドリル・ブリッジ)」です。ITインフラ運用のあり方を変える挑戦は、すでに動き始めています。
社会を止めない仕事が、難しくなった理由
ITインフラ運用は、これまでも高度な判断と経験が求められる領域でしたが、近年、その難易度はさらに上がっています。
背景にあるのは、企業のITが「新しい技術に置き換わる」のではなく、既存のシステムに新しい技術が継ぎ足されながら拡張されてきたことです。
昔から使われてきた中枢システムの上に、新しい仕組みが追加され、さらに複数の製品やサービスが組み合わさって、ひとつのシステムとして動くようになりました。
こうした環境では、ある部分で起きた不具合が別の領域にも波及し、障害が連鎖しやすくなります。
結果として、問題が発生したときに「どこが出発点だったのか」を突き止めるだけでも時間がかかるようになりました。
現場の運用が直面しているのは、まさにこの複雑さなのです。

「3時間停止」が突きつけた現実
欧州の大手銀行で、システム障害が発生し、オンラインが3時間止まってしまった事例がありました。金融機関にとって、オンラインの停止は社会的信用に直結する重大なトラブルです。
原因究明が進められた結果、「特定のバージョンの組み合わせと設定によって、ある不具合を引き起こす可能性がある」ということが分かりました。
ここで重要なのは、こうした事例を「その銀行だけの教訓」で終わらせないことです。
同じような構成でシステムを運用している企業は、世界中に存在します。
つまり、同じリスクを抱えたまま運用している企業が他にもあるかもしれないのです。
にもかかわらず、従来の運用は基本的に「その会社の中」で完結していました。
別の企業で似た障害が起きたとしても、またゼロから原因を探し、復旧し、改善を繰り返す。それが当たり前になっていたのです。

Kyndryl Bridgeは、「運用の知見」を資産に変えるプラットフォーム
同じような障害を別の企業で繰り返さず、次の改善につなげる仕組みとして生まれたのが「Kyndryl Bridge」です。
「Kyndryl Bridge」は、企業のITインフラ運用を支えるためのプラットフォームで、現在は1,200社以上のお客様が接続し、運用データが集まっています。
ここで扱うのは、単なるログやアラートだけではありません。
障害が起きたときに「何が起き、どのように対応し、どう復旧したのか」といった運用のプロセスそのものが、“点”ではなく“線”として残っていきます。
そしてそこに、私たちが長年の運用で培ってきた知見が掛け合わされます。
経験に頼りがちな運用を、再現できる形へ変えていく。そのための土台が「Kyndryl Bridge」です。
複雑なシステムを運用する現場では、データが集約され、状況が見えるだけでは十分ではありません。
重要なのは、「次に何をすべきか」まで判断できることです。
「Kyndryl Bridge」は、膨大な運用データの中から似たパターンを見つけ出し、過去の事例や運用知見と結びつけながら、原因候補や対策をAIで導き出します。
示唆を出すだけでなく、改善手順や自動化へつなげられる点が、大きな特徴です。

ひとつの障害が、別のお客様の未来を守る
「Kyndryl Bridge」の強みは、運用の経験が「その企業だけの学び」で終わらないことです。
ある企業で起きた障害から得られた知見が蓄積されれば、同じような構成で運用している別のお客様に対しても、「起こり得るリスク」として早期に示すことができます。
過去の障害が、未来の事故防止に変わる。
「Kyndryl Bridge」が目指しているのは、「起きてから直す」運用から「起きる前に防ぐ」運用への転換です。
実際に国内の大手自動車メーカーでも、「Kyndryl Bridge」を活用することで「障害率が下がった」「復旧までの対応時間や初動が短縮できた」といった成果が生まれています。
運用の世界では、こうした改善が積み上がること自体が大きな価値になります。
その価値が目立ちにくい領域ではありますが、 “止まらない社会”を支える力へと確実につながっていくのです。
運用の仕事は、エンジニアのキャリアをどう変えるのか
ITインフラ運用という仕事は、これまで「トラブル対応の仕事」という印象を持たれがちでした。
実際、障害対応の現場は緊張感が高く、地味で大変な仕事に見えるかもしれません。
ただ、運用の現場で積み重ねられる経験は、エンジニアとしての視野を大きく広げてくれます。
ひとつのシステムだけを見るのではなく、複数の技術や製品がどうつながり、どこにリスクが生まれやすいのかを俯瞰して捉える力。
トラブルが起きたときに、部分最適ではなく全体最適で判断する力。
そして、同じ問題を二度起こさないために、仕組みとして改善を設計する力。
こうした力は、特定の製品や技術が変わっても通用する、エンジニアとしての“軸”になります。
AIや自動化が進むほど、単純な作業は減っていきます。
その一方で、「どこに課題があるのか」「何を変えれば再発を防げるのか」を考え、仕組みに落とし込む役割は、ますます重要になります。
運用の仕事は、ただシステムを守るだけではありません。
複雑な環境を読み解き、リスクを構造的に減らしていく。その経験は、将来どの分野に進んだとしても、エンジニアとしての大きな強みになります。

運用の未来は、静かに、でも確実に変わっていく
ITインフラ運用は、社会の当たり前を支える仕事です。
そして今、その運用はAIによって新しい形へ進化しようとしています。
経験と知見をデータとして蓄積し、次の改善へつなげる。
そうした循環が広がれば、運用はより強く、より持続可能な仕組みになっていくはずです。
この変化の中で求められるのは、単に新しい技術を使うことではありません。
現場の課題を見つけ、仕組みとして改善し、社会を支える基盤をアップデートしていく力です。
もしあなたがITに興味があるなら、ぜひ「開発」だけでなく「運用」という領域にも目を向けてみてください。
そこには、技術の最前線と、社会を支える責任、そしてエンジニアとして成長できるフィールドがあります。
私たちキンドリルジャパンは、「Kyndryl Bridge」とともに、その変化を現場から形にし、次の時代のITインフラ運用をつくっていきたいと考えています。
