薬学からサイバーセキュリティという選択肢
キンドリルジャパン株式会社
Security Assurance
Cybersecurity Assurance
S.F
「薬学部に入ったのだから、製薬会社や研究職を目指すのが当然」
そんな空気を感じたことはありませんか。
私も薬学部・薬学研究科で学び、研究職を志望していました。周囲の多くが製薬会社や医療系企業を目指しており、それが自然な進路だと思っていました。
そんな私は現在、キンドリルジャパンというIT企業でサイバーセキュリティの業務に携わっています。専攻とは異なる分野に見えるかもしれませんが、振り返ると、学生時代に身についた考え方や経験が今の仕事につながっている面もあります。
薬学という専攻が、将来の可能性を一つに限定するわけではありません。私の経験が、進路を考える際のヒントになればと思います。
A. 実は文系科目の方が得意でした。
薬学部に進学した私ですが、子どもの頃から得意だったのは国語や英語、歴史といった文系科目でした。
それでも、将来は医師や医療研究に関わる仕事に就きたいという想いがありました。そのため、高校での文理選択では理系を選びました。得意科目とは逆でしたが、「やりたいことがあるなら、苦手でも向き合うしかない」と考えていました。
大学受験は苦労しました。数学や理科、とくに物理は全くセンスがなく…。時間をかけて問題集を繰り返し解き、克服していきました。

A. 「より多くの人に届く医療」に惹かれたからです。
医療に関わりたいという思いは早い段階からありました。医学部も検討していましたが、ある薬学部の学長がおっしゃっていた「医師は目の前の一人を救う存在ではあるけど、薬が一つ生まれれば世界中の人を救える」という言葉が強く印象に残り、医療への関わり方にはさまざまな形があるのだと感じました。
目の前の患者と向き合う道もあれば、研究や創薬を通じて広く社会に影響を与える道もある。自分は後者の立場から医療に関わりたいと思い、薬学部を選びました。
A. 微生物に関わる研究をしていました。
薬学部では、いわゆる創薬ではなく、「衛生微生物学」という分野を専攻しました。目に見えない微生物が、どのような環境に存在し、どのように活動しているのかを実験で検証していく。地道な作業の積み重ねですが、日常生活とつながっているテーマでもありました。
修士課程では、「アーキア(古細菌)」と呼ばれる微生物の一種を扱っていました。細菌とは異なる特徴を持つ生物群で、研究対象としてはやや専門的な領域です。培養や解析を通じて、その特性を明らかにすることを目指していました。
派手な成果が出る研究というよりも、データを積み重ね、仮説を立て、検証し、また考え直す。その繰り返しでした。
A. 研究そのものよりも「自分に向いていること」がみえてきました。
研究に取り組む中で、実験を進める時間よりも、結果を整理してスライドにまとめたり、発表の構成を考えたりしている時間の方が、自然と前向きに取り組めている自分に気づきました。学会発表では、質疑応答でのやり取りが楽しく、「どう伝えれば納得してもらえるか」を考えることに面白さを感じていました。
「研究が向いていない」とまで思ったわけではありませんが、実験を極めるよりも、情報を整理し、論理的に構成し、外に向かって伝えていく役割の方が、自分には合っているのではないかと感じ始めていました。

A. 医療系だけではなく、ITも面白そうだと思いました。
医療や化学、化粧品など、これまでの学びに関連する業界も見てはいました。ただ、自分の特性を考えたときに、一つのことを長くやり続けるよりも、いろいろなことにチャレンジできる環境の方が向いているのではないかと感じました。
パソコンを触ること自体も好きでしたし、IT業界であればさまざまな企業や業界と関わる機会があると感じました。「ITっていいな」という、比較的素直な気持ちから、選択肢の一つとして考えるようになりました。
A. 迷いはありませんでしたが、不安はありました。
周囲のほとんどは薬剤師や製薬会社、化粧品会社などに進みます。その中で異分野に進むことになりますが、私は大きく迷うことはありませんでした。
私は自分のことを“ラッキーな人間”だと思っているようなポジティブな性格で、これまでの人生の選択で後悔したことがほとんどありません。「自分が選んだ道なら大丈夫だろう」と前向きに考えていました。
一方で、不安がなかったわけではありません。プログラミングに触れたこともありませんでしたし、IT業界について調べることはできても、実際に働いてみないと分からない部分は多いと感じていました。
不安はありましたが、新しいチャレンジだと捉えていました。
A. 大きなプラスもマイナスもなかった、というのが正直な感想です。
薬学系であることが有利に働いた、あるいは不利に働いたという実感はありません。ただ、異分野への志望であるため、「なぜIT業界なのか」という問いは多く受けました。そこを自分の言葉で説明できなければ、納得してもらうことは難しかったと思います。
学生時代の経験を通じて、論理的に考える力は身についていたと感じています。業界が違っても、社会人として求められる基礎的な力は共通している部分があるのではないかと思います。

A. 社員の方々の雰囲気を見て、「ここなら自分に合う」と感じたことです。
決め手になったのは、面接で当時の本社に伺ったときのことです。偉そうに聞こえてしまうと思うのですが、社員の方々を見て、「自分と雰囲気が似ている」と感じたのです。
もう少しかみ砕いて言うと、社員の皆さんが堂々としていて、目上の人に対しても自分の意見をはっきり言う印象がありました。それが私自身の「ありたい姿」に近いと思いました。
実は、別の業界のとある企業の面接で「上司から指示を受けたときに、自分の考えと合わなかったらどうしますか?」と質問されたことがありました。そのとき私は、「一度意図を確認し、納得してからその通りに動きます」と素直に答えました。すると「それは当社の社風に合わない。上司の指示は会社の指示であり、若手が覆すのは難しい」と言われました。
日本IBMで感じたのは、そのような会社とは真逆の社風でした。「ここでなら自分らしく働けるはずだ」と感じたことが、入社の一番の決め手です。キンドリルジャパンとしても、この社風は変わりません。立場に関わらず意見を言い合える、風通しの良さがあると感じています。
A. お客様のシステムの安全性を守る仕事をしています。
サーバーやネットワーク機器など、お客様からお預かりしているシステムに「セキュリティホール(脆弱性)」と呼ばれるリスクがないかを分析する、サイバーセキュリティの業務を担当しています。弱い部分をどのように守るかを検討し、改善提案や日々の運用の見直しをおこなっています。
技術的な分析だけでなく、お客様とのコミュニケーションも重要な役割です。課題を整理し、安全な状態を維持できるようサポートすることが役割です。

A. 「何も起こらない」がお客様の安全につながることです。
サイバーセキュリティの仕事は、情報漏洩やサイバー攻撃といった事故を未然に防ぐことが目的です。つまり、私たちの仕事は「何も起こらないようにすること」です。
ニュースでサイバーセキュリティに関する大きな事故が報道されることがありますが、逆に言えば、ニュースにならなければそれが成果です。自分たちの仕事が目に見えて評価される場面は多くありません。「うまくいっていること」が当たり前になっている世界です。
その中で印象に残っているのが、社内の監査業務に関わったときのことです。企業はコンプライアンスを守るためにさまざまな監査を受けますが、日頃からプロセスを守り、従業員のセキュリティ意識を高める取り組みを続けた結果、「問題なし」という評価をいただくことができました。
大きなトラブルを解決した、という分かりやすい成果ではありませんが、「事故が起きない状態を維持できた」という事実は、この仕事の価値そのものだと感じています。
A. 良い意味で「疑える人」だと思います。
あらゆる情報に関して「本当にそうなのか」「見落とされている点はないか」と考える姿勢が重要だと感じています。
お客様のシステムを安全な状態に保つためには、前提を疑い、リスクを洗い出す必要があります。鵜呑みにしてしまうと、気づかないまま脆弱性を残してしまう可能性もあります。
今となってみると、自分の性格的にもこの仕事は合っていたと思います。就職活動のときにも感じていましたが、私は「なぜ必要なのか」「何を目的としているのか」を確認したうえで動きたいタイプです。そうした考え方は、サイバーセキュリティの仕事にもそのまま活きています。

A. 自分の可能性を決めつけないでほしいです。
薬学を専攻していると、「その学びを直接活かせる仕事に就くべきだ」と自然と考えてしまうこともあると思います。中には「それができなければ就活失敗」とまで感じてしまう人もいるかもしれません。
ですが「学びを活かせない=失敗」と決めつける必要はありません。成功・失敗を決めるのは他人ではなく、自分自身です。他人から見て「あの業界・企業に行くなんて」と言われたとしても、自分が納得していて、仕事を楽しめているのであれば、それでいいのではないでしょうか。
就職活動で悩んだとしても、5年後、10年後にその業界に居続けているかは分かりません。キャリアは一度の選択で固定されるものではありません。
自分の人生なので、自分らしく生きることを考えてほしい。最終的に、人生の終わりに「幸せだった」と思えれば、それがその人にとっての正解なのだと思います。