理系は好きじゃない?研究は仕事に直結しなかった? ――“開発出身人事”のちょっと変わったキャリアパス。
好きや得意に縛られすぎず、戦略的に動いた先で出会う面白さを大切にするキャリアパス
「理系が好きだから理系に進んだ」「研究がやりたくてその道へ」――そんな王道の歩みとは、門間さんは少し違う道を選んできました。
“好き”や“得意”だけで決まるわけではない進路選び。戦略的な就活をしてみたら、思いがけず仕事が好きになったこと。現場を知った上で、人事として学生に寄り添えるようになったこと。門間さんの「ちょっと変わったキャリアパス」をたどると、進路や就活に迷う学生が前に進むためのヒントが見えてきます。
理系が嫌いだった私が理系に進んだ理由
理系に進む人の多くは「理系が好きだから」ですよね?私は少し違うタイプでした。実は得意でも好きでもなかったのですが、将来の選択肢を広く持っておきたい——その一点で理系を選びました。
夢や志望職種が明確だったわけではありませんが、幅広く“四力”を学べる機械系なら、進路の幅もさらに広がると考え、精密機械工学科に進みました。私の中で「将来の選択肢をとにかく広く持ちたい」という考えがブレずにありました。

個性ある車を生み出す、驚くほど真面目なHondaの社員たち
就活は自動車業界に絞っていました。興味を持ったきっかけは「バイク」。大学生になって初めて買ったバイクはHondaでした。「理系の人って、こういうものづくりをしているんだ」と体感し、興味を持ってHondaについて調べたり、インターンシップに参加したりしました。
Hondaのインターンシップで印象的だったのは「いい意味でのギャップ」。私の中でHondaは個性が尖った車をつくる会社という印象でした。なので、社員や社風も、良く言えば独創的、悪く言えば「大雑把なところがあるのかな…」と勝手に想像していました。。ですが、実際に参加してみたら真逆で、社員の人たちがめちゃくちゃ真面目だったのです。「そこまで突き詰めるの!?」というほど、厳しい要件をつくって開発している姿を目の当たりにして、イメージが覆りました。独創性とストイックさが両立している——そんなHondaらしさを知れたことが、私にとってすごく印象的でした。
“ドア開発がしたい”は戦略。
でも、配属されて本当に好きになった
入社後は完成車開発の部署に配属されました。ドアをはじめとした“蓋物”の強度・耐久性といった機能や性能を担当する部署です。さらに、商品性という観点で「どう持ったら使いやすいか」「どう閉めたら気持ちいいか」といった、人間工学に近いテーマにも関わりました。
「自らドアの部署を希望したのですか?」と学生に聞かれることがあります。大学ではドアの衝撃吸収部材に関する研究をしていて、インターンシップではドアの部署を希望して配属されました。そして面接でも「ドアの開発がしたいです」と言い切りました。ここまで聞くと「どんだけドアが好きなの?」と思われるでしょうが、実はそうではなく…(苦笑)。メーカーからすると“ドアの開発を希望する学生”ってかなり珍しいじゃないですか。少しでも私に興味を持ってもらうための“就活戦略”だったのです。
結果として、ドア開発を希望したのは大正解でした。ドアって、一見ただの開け閉めする部品に感じますが、実際は“超・機能部品”。ガラスの昇降、ドアミラー、衝突性能、静粛性…さらにはドアノブの指の入れ方の本数まで、徹底的に考え抜いてつくられています。閉じれば見えなくなる細かい形状も、実は全部に意味があります。“当たり前に使ってもらうために、途方もない工夫が詰まっている世界”。そんな場所で働けたことが、シンプルに幸せでした。今では胸を張って言えます。
「ドア、大好きです。」

1年目でType R開発へ。
若手に任せる文化と、初もの開発の大変さ
特に印象に残っているのは、CIVIC TYPE R(シビック タイプアール)の開発です。入社1年目で「TYPE Rをやりたいです」と手を挙げました。すると本当に任せてくれたのです。年齢を問わず意欲を買ってくれる文化があるのも、Hondaで働く魅力の一つです。
ただ、そこからは、うれしさと同じくらい苦労もセットでした。TYPE RはHonda自身が高いハードルを超えるために存在するクルマです。私が担当したのはエンジンの上の蓋、ボンネットフードでした。TYPE Rのボンネットには熱を逃がすための穴が開いているのですが、「ただ穴を開ければいい」という話ではありません。見た目の美しさ、強度、耐久性、熱で壊れない構造、材料選定…。これまで例のない位置で穴を開けるための要件設定や解析手法、判定値、テスト方法まで全て自分で考える必要がありました。「ここに手をついたらヤケドしないか?」「壊れやすくないか?」そうしたリスクを一個一個潰していく作業は本当にしんどかったです。でも、そのしんどさの中に確かな面白さがありました。
大きな仕事を担うことは、飛躍的な成長につながります。責任は重いですが、「本気でやり切る覚悟」があれば、どこまでも自分を伸ばせる。それを実感した開発でした。
開発現場から人事へ。
想像以上に奥が深かった
完成車開発に7年携わり、自ら希望して人事部に異動しました。Hondaに限らず多くのメーカーでも同じだと思いますが、人事担当者は文系出身者が多いのが実情です。だからこそ、開発を経験してきた自分が採用に関わることで、理系学生の疑問や不安により近い目線で向き合えるのではないか。そんな思いから人事への異動を決めました。
実際に人事部に来て感じたのは、「求められる力の種類がまったく違う」ということでした。開発では、技術を軸にチームで最適解をつくり込んでいきますが、人事では、立場も考え方も異なる相手と向き合いながら、合意点を探していく場面が多くあります。社内はもちろん、学生や学校の先生、社外のパートナーなど、関わる人の幅も広く、その分、コミュニケーションの引き出しが一気に増えていく感覚がありました。
特に印象的だったのは、若手の成長スピードです。入社1〜2年目でも、対話力や調整力に長けていて、「ここは自分も学ばないと」と感じる場面が何度もありました。技術のバックグラウンドがあることは確かに強みにはなりますが、それだけで通用する世界ではない。開発とは違う“専門性”を持った人たちが集まっている部署だと感じました。
仕事のやりがいも大きく異なります。開発では数年先の量産を見据えて仕事をしますが、人事は数ヶ月後、早ければ数週間後に施策の結果が見えてきます。自分の工夫が、現場や学生の反応としてすぐに返ってくる。そのスピード感は、人事ならではの面白さだと思っています。

次のキャリアは模索中。
でも“楽しい”を基準に選びたい
この先、どんなキャリアを歩みたいかは、絶賛考え中です。ずっと人事もいいなと思うし、開発に戻るのもありだと思っています。開発が嫌になって異動したわけではありません。人事で得た経験は開発でも活かせるし、開発と人事の連携という観点でも、できることは増えると思います。
ブレずに大切にしたいのは「何が一番楽しいか」という基準。開発の面白さも人事の面白さも知ったからこそ、自分が一番ワクワクする場所を探していきたいです。
研究が直結しなくても大丈夫。
経験は必ず残る
学生のみなさんに伝えたいこと。それは「研究内容がそのまま仕事に直結しなくても全く問題ない」ということです。むしろ、多くの人はつながらないのが普通です。
私自身、大学ではドアの衝撃吸収について研究していましたし、入社後もドア開発の部署に入りました。でも、研究で学んだ“知識”がそのまま役に立ったかというと…実はほとんどありませんでした。
一方で、“活きた”と強く感じたのは、研究で身についた「進め方の力」 。研究の中で「ゴールを決めて」「計画を立てて」「周りと協力して成果を出した」というプロセスです。これはどんな仕事でも通用する力になります。さらにもう一つ大事なのが、人との関わりです。研究室の中だけに閉じこもってしまうと、関わる人が限られて考え方も狭くなりがちです。無理に仲良くする必要はなく、好き嫌いはあってもいいと思います。ですが、“いろいろな価値観の人がいる世界”に少しでも触れておくと社会に出た時本当に効いてきます。だからこそ、研究は“内容”以上に視野を広げるための大事な時間なんです。
結果的に、研究そのものが仕事につながらなくても、そこから得た経験は絶対に無駄になりません。
興味を持ったら、気軽にクリックしてください。社員や人事担当者から、メッセージが届きます。
