当時珍しかったワイヤレスな音楽リスニング体験に未来を感じ、Bluetoothヘッドホンのソフトウェア開発の部署を志望して2016年に新卒入社。以降、現在まで、Bluetoothヘッドホンの設計・開発を担当。
視覚障がい者の人たちに向けたプロジェクト。何が本当に喜ばれるのか、どういう使い方を想定すべきか、実際にユーザーの視点に立って話を聞いてみて、初めてわかることがある。だからこそ開発の過程で多くの気付きがあり、面白い。
ソニーの完全ワイヤレス型ヘッドホン「LinkBuds(リンクバッズ)」※ と、株式会社コンピューターサイエンス研究所が開発する視覚障がい者向け歩行支援アプリ「Eye Navi」。音声を聞きながら自然に周囲音も聞くことができ、内蔵されるセンサーによって装着者の頭の向きを判別できるLinkBudsと、音声による道案内と障害物検出機能を備えたEye Naviが連携することで、視覚障がい者の歩行時にユーザーの顔の向きに応じた直感的で分かりやすい音声案内を可能にしました。
その開発過程で、視覚に障がいのある方々がアプリをどのように使うのか、どのような機能があれば喜ばれるのかをイメージしながら開発を進めていくことの難しさと、得られたことについて、ソフトウェア担当の狩宿さんにお話を伺いました!
※ 2024年10月2日に新機種「LinkBuds Open(リンクバッズ オープン)」を発表済み。
Eye NaviとLinkBudsを連携させるソフトウェアの開発を担当しています。もともと、ヘッドホンやイヤホンを他社のサービスと連携させて新しい体験を生み出すようなソフトウェアの開発に携わっており、そこに新たなミッションとして今回のプロジェクトに参加しました。


学生のころからソフトウェアを作ることが好きで、よくスマホ向けアプリの開発などを行っていました。その活動の中で興味を持った組み込み系ソフトウェア※ の開発に携わりたいという思いがあったのと、あわせて音楽にも興味があったため、ヘッドホンのソフトウェア開発業務に魅力を感じてソニーへの入社を決めました。自分が入社することでソフトウェアの面で何か大きな成果を残したいという思いも持っていました。
※ 組み込み系ソフトウェア:家電や自動車、携帯端末などの特定のハードウェアに特化した制御を行うソフトウェア。

「Eye Navi」開発チームとは過去に連携したことがなかったので、お互いに相手が何をできるのかわからない状態から始まりました。ましてや私自身、視覚障がい者向けのプロジェクトが初めてだったので、どんな製品やサービスを提供できたら喜んでもらえるか、イメージがつかめないという不安もありました。その反面、協議を重ねて作りたいものをゼロから開発することで、もしかしたら今まで世の中に無かった新しいものを作れるのではないかという好奇心もありました。
社外のエンジニアの方々は私たちにないスキルセットを持っていますし、対象としてきたユーザー像やサービスの種類も異なるため、異なる視点や考え方に触れることができたのは刺激になりました。特に「Eye Navi」開発チームは視覚障がい者向けの製品やサービスの開発経験が豊富で、設計段階からいろいろなアドバイスをいただきました。
中でも印象的だったのはLinkBudsの立体音響のセットアップを行う際のユーザーインターフェース※ についての意見です。視覚障がい者の多くの方が利用する音声読み上げ機能は文章やボタン名称を画面の上部から読み上げるため、ボタンが画面の最下部にあると、そのボタンがあることに気が付くまで時間がかかってしまう、あるいはボタンがあることに気が付けない、というものでした。視覚障がい者の皆さんがどのように製品を使うか想像しながら設計しているつもりでも、私たちには気付けなかった細かいところに目を向けることができるのは非常に面白いと思います。
※ ユーザーインターフェース:ボタンやテキスト、操作時の画面遷移、読み上げ音声など、ユーザーが製品やサービスを利用する際の接点となる要素。

「この製品が早く一般に導入されるのを期待しています」と、自分がやっていることを肯定してくれるご意見をいただけるのはとてもうれしく、さらに頑張ろうという気持ちになりました。一方で厳しいご意見をいただいたり、実際にイヤホンを装着してもらうことで視覚障がい者の実際の使い方を学んだりして、新しい発見があり、とても印象的でした。
はい。まずは室内でEye NaviとLinkBudsを連携するためのセットアップを行っていただき、それから外に出て実際に機能を使っていただく、という流れでユーザーテストを行いました。テストには2度立ち会ったのですが、実は1度目のテストでは、参加者全員が最初のセットアップの段階でつまずいてしまいました。
セットアップ時にはセンサーの調整のためLinkBudsを装着した状態で頭を上下に動かしてもらう必要があります。そこで当時は事前に説明してから開始ボタンを押し、その後実際に頭を動かしてもらうという順序で設計していたのですが、1度目のテストでは説明通りに動かしてもらうことができなかったんです。この結果を受けて、ユーザーが頭を動かしている間リアルタイムでアナウンスを行うように改善し、2度目のテストでは全ての被験者がセットアップに成功するようになりました。
また、街の中に出ていただく際も、自分の正面に信号機があるときだけアナウンスしてほしいという意見をいただきました。私たちはカメラの画角の中のどこかに信号機があれば、素早く音声で知らせるべきだと思っていたので、とても印象的でした。
ユーザーがどう使うかというイメージを具体的に持てるようになったのが大きな変化だと思います。今までは自分が面白い、と感じるものを開発したいと考えていたのですが、それよりも多くのユーザーが喜んでくれるもの、本当に必要とされているものは何か、を第一に考えるようになりました。そういった目的意識を持つことができたのは今後の業務に生きてくると思っています。


視覚障がい者に限った話ではありませんが、展示会でも最も多かった「イヤホンが落ちそうで心配」というフィードバックを受けて、「LinkBuds Open」では新開発のフィッティングサポーターなどにより、装着時の安定性の向上を図っています。また、本商品もEye Naviと連携していますが、街中でより充実したサポートができるように先方と継続検討しています。
街中を安全に歩きたいというのは視覚障がい者の皆さんが本当に必要としていることだと感じますし、展示会やユーザーテストでの厳しい意見もソニー製品に期待していただいているからこそだと思うので、ユーザーエクスペリエンス※ や立体音響の品質の向上も含めて開発を進めていきたいです。
※ ユーザーエクスペリエンス:製品やサービスを通してユーザーが得る体験の総称。

一人ひとりのユーザーから強く求められるような機能を開発し、引き続き社会に貢献できる業務に携わりたいです。今回のプロジェクトを通じて、何が本当に求められているのかをユーザーと一緒に考えながら開発していくことに一番魅力を感じましたし、他社と連携することで新しい視点をどんどん取り入れつつ開発していくことができるという点でも非常に良いキャリアを築けていると思っています。
自分が面白いと思うものより、ユーザーが本当に喜んでくれるものを作る。自分のためではなく誰かのために開発するというのは、まさに人に寄り添うソニーの姿勢を体現している考え方だと感じました。想定していなかった課題がどんどん見つかり、そのたびにより良いものに仕上げていくのも、大変だけどやりがいがあってとても楽しそうです。
これからもソニーのソフトウェア業務の魅力を発信していきます!
・障がいの壁を取り除くことを目指した新たなコントローラー、その細部に込められたこだわりに迫る。
・「見えづらい」を「見える」に変える。ソニーが実践するアクセシビリティとは
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