【コース12-2】理系流コミュニケーションの方程式「聞く×論理×感情=伝わる」|ステップ学習『理系とコミュ力』
理系の強みである論理力に、聞く力と感情表現を掛け合わせることで、相手の行動を引き出す伝わるコミュ力を実践的に解説。
【コース12の記事一覧は▶をクリック】
導入 ― 「話す力」より「聞く力」から
「自分の研究発表、なんで響かないんだろう……」
研究室のM2先輩が、学会発表後の飲み会でつぶやいた。
技術もデータも論理も完璧。しかし、聴衆の反応は薄い。
実は、コミュニケーションの出発点は「話すこと」ではなく、「聞くこと」にある。
相手が何を求めているのか、どんな知識を持ち、どんな感情で聞いているのか――。
それを理解しないまま一方的に話しても、どんなに論理的でも伝わらない。
ビジネスコミュニケーションにおける三大スキル「傾聴力」「質問力」「伝達力」。
この中で最も重要なのは、相手の理解を起点とする傾聴力だ。
理系学生こそ、まず「聞く力」から磨こう。相手を理解してから、論理で攻めるのだ。
研究発表とビジネスプレゼンの共通点
論理の構造は同じ。
研究発表の基本構成は、ビジネスプレゼンの「PREP法」※にそのまま通じる。
| 研究発表の流れ | PREP法との対応 |
|---|---|
| 背景・目的 | Reason(理由) |
| 手法 | Example(具体例) |
| 結果・考察 | Reason + Example |
| 結論 | Point(要点) |
理系学生はすでに、結論ファースト・因果関係の明確化という最重要スキルを身につけている。
- 仮説→検証→結論の思考プロセス
- データに基づく根拠提示
- 複雑な概念を整理し伝える構造力
博士課程1年・Cさん(情報工学)
「学会発表で鍛えたから、面接で『3分で研究を説明してください』と言われても落ち着いて対応できた。結論→理由→例→まとめの流れは、研究そのものだった。」
※PREP法とは、結論→理由→具体例→結論の順で話す構成法。主張をわかりやすく説得力をもって伝えられる話し方。
| 要点・結論 | Point |
| 理由 | Reason |
| 具体例 | Example |
| 要点・結論 | Point |
研究とビジネスの決定的な違い
研究発表の目的は「正しさの共有」。
ビジネスプレゼンの目的は「行動を促す」。
| 項目 | 研究発表 | ビジネスプレゼン |
|---|---|---|
| 目的 | 客観的事実の報告 | 相手の行動を促す |
| 優先順位 | 正確性>感情 | 感情・納得感≧論理 |
| 聴衆 | 専門家 | 多様な立場の人々 |
人は論理ではなく感情で動く。
心理学的には「感情で決め、論理で正当化する」といわれる。
同じ伝え方でも響き方が変わる例:
- 研究発表風:「従来手法に比べて処理速度が15%向上しました。」
- ビジネス風:「お客様の作業時間が30分から25分に短縮。年間で3週間分の時間を節約できます。」
理系の強み ― 論理力
理系の思考法は、すでにビジネスの武器である。
- 因果関係を整理する力:「AだからB、BだからC」
- 根拠を明示する習慣:「なぜそう言えるのか」を常に検証
- 複雑な情報を構造化する力:研究成果の整理がそのまま課題解決力に直結
機械系修士卒・Dさん(メーカー勤務)
「営業から技術相談を受けることが増えた。論理的に整理して説明するだけで、“信頼できる人”と評価される。」
補うべき要素 ― 感情と共感
理系の「論理」に、感情を加えると伝わり方が一変する。
数字に“人の顔”を加える
×「コスト削減効果は年間500万円」
○「この改善で、お客様は年間500万円を節約。新人エンジニア3人分の人件費に相当します。」
ストーリーで包む
「なぜ始めたのか」「何に苦労したのか」「成功の瞬間」を短く語るだけで、人は惹きつけられる。
相手の立場で語る
「技術的には可能ですが、実運用を考えると…」という視点が信頼を生む。
感情表現の練習法
- 声のトーンと間(ま)を意識する
- 表情・ジェスチャーで補助する
- ポジティブな語彙で話を締める
実践トレーニング法
① 聞き上手になる
- オウム返し法:「忙しいんですね」「それは大変ですね」
- 要約して返す:「つまり、課題は予算・スケジュール・人員の3つですね。」
② PREP法で話す練習
- P:結論「新手法で2倍の効率化を達成しました」
- R:理由「アルゴリズムを刷新し、計算量を削減したためです」
- E:具体例「処理時間が30秒→15秒に短縮」
- P:まとめ「実用化すれば大幅な時間短縮が見込めます」
③ ストーリーテリングを導入
「最初は失敗続き。でも、3ヶ月目に試した小さな工夫で――結果が劇的に変わったんです。」
④ 研究をビジネス風にリフレーミング
研究発表:「CNNを用いた物体検出精度の向上について」
ビジネス版:「AIが人の目では見落とす不良品を瞬時に発見するシステムを開発しました。」
結び ― 論理と感情のハイブリッドへ
理系コミュニケーションの方程式
聞く力 × 論理力 × 感情表現 = 最強の伝わる力
理系の君たちの論理的思考力は、社会で通用する強力な武器。
そこに「相手を理解する聞く力」と「感情に訴える表現力」という翼をつけよう。
論理で説得し、感情で行動を引き出す。
それが、理系流コミュニケーションの真髄だ。
データと感情、論理と共感――この二刀流を自在に操る理系こそ、
次世代のコミュニケーションリーダーとなる。
参考文献
- 日本能率協会マネジメントセンター「傾聴力を高める5つのトレーニング」 https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0152-listening_ability.html
- グロービス経営大学院「コミュニケーション能力とは?」 https://mba.globis.ac.jp/careernote/1181.html
- SELECK「論理と感情を操るプレゼン術」
