学生特権は"今だけの最強カード"、叱られなくなったら終わりだ。「守られながら実験できる時間」を活用しよう。
「あの、お時間いただけますか?」
こう切り出せば、たいていの社会人は耳を傾けてくれる。学生という肩書きがあるうちは、だ。
実は、学生であることは想像以上に大きな特権だ。社会人に話を聞きやすく、熱心さは好意的に受け止められ、失敗しても「まだ学生だから」というクッションが効く。この立場は、社会人になった瞬間に消える。二度と戻ってこない。
卒論でのインタビューでも、キャリア相談でも、業界研究でも「学生です」と名乗るだけで、ドアは開く。これが社会人になると「何の用ですか?」に変わる。学生のうちに、この最強カードをフル活用しない手はない。
だが、この特権には「賞味期限」がある。そして多くの学生は、その価値に気づかないまま卒業していく。

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「学生と社会人って、何が違うんですか?」
この質問への答えは、一言で言えば「立場と責任の転換」だ。
学生時代、君たちの本分は「学ぶこと」だ。授業を受け、課題を提出し、試験に臨む。お金を払って教育を受ける側である。
一方、社会人はお金をもらって価値を生み出す側に立つ。学ぶことも大切だが、それは「成果を出すための手段」であって、学ぶこと自体が目的ではなくなる。
パーソル総合研究所の調査によると、「仕事を通じて成長したい」と思っている学生は86.2%にのぼるが、実際に成長を実感できている若手社会人1〜3年目は64.6%にとどまる。さらに衝撃的なのは、「働くことを楽しみたい」と考えている学生が79.3%いるのに対し、実際に楽しめている社会人はわずか35.3%という現実だ。
なぜこんなにギャップが生まれるのか?
それは、「守られる立場」から「結果を求められる立場」への視点転換がうまくいっていないからだ。学生のうちにこの転換の意味を理解し、準備することが、キャリアの出発点になる。

「バイトで働いてるから、社会人の気持ちもわかります」
本当にそうだろうか?
アルバイトの基本は「時間を売る仕事」だ。時給1,000円なら、1時間働けば1,000円もらえる。シフトに入った分だけ稼げるし、シフトが終われば基本的に責任も終わる。
「レジ打ちをする」「料理を運ぶ」「データ入力をする」――与えられたタスクをこなせば、それで十分だ。
一方、正社員は「成果と価値を生み出す仕事」をする。
月給制だから、働いた時間そのものは直接給料に反映されない。その代わり、「どんな価値を生み出したか」「どう会社に貢献したか」が評価される。
アルバイトが労働時間の対価を受け取るのに対し、社員は継続的に成果を上げる責任を負う。しかも、責任範囲は自分の担当業務だけにとどまらない。チーム全体の成果、後輩の育成、業務改善――そういった「見えない仕事」も含まれる。
同じ「はたらく」でも、求められる基準がまるで違うのだ。
ある企業の人事担当者はこう語る。
「バイト経験がある学生は確かに社会性がある。でも、バイトと社員は別物。バイトでは『言われたことをやる力』は身につくけど、『自分で考えて動く力』や『責任を背負う覚悟』は育ちにくい。そこを理解してない学生は、入社後に苦労する」
「今の時代は、指導する側が厳しくできなくなって」
これは、イチロー氏が全国の高校野球部を訪れた際に繰り返し語っている言葉だ。
2023年11月、イチロー氏はある高校でこう語った。
「今の時代、指導する側が厳しくできなくなって。(中略)これは酷なことなのよ。高校生たちに自分たちに厳しくして自分たちでうまくなれって、酷なことなんだけど、でも今そうなっちゃっているからね。(中略)でも自分たちで厳しくするしかないんですよ」
イチロー氏が指摘しているのは、「厳しく指導されないこと」の危険性だ。
叱られること、厳しく指導されることは、実は期待の証なのだ。
なぜなら、人は「この人は伸びる」と思う相手にこそ、真剣にフィードバックするからだ。逆に、「もうこの人には何を言っても無駄」と思われたら、指摘すらされなくなる。
指摘されないのは、無関心の証だ。
学生のうちは、まだ「叱ってもらえる」特権がある。先生も、先輩も、バイト先の店長も、まだ君たちに期待しているから、時には厳しいことも言ってくれる。
でも社会人になると、そうはいかない。上司も同僚も忙しい。わざわざ時間を使ってフィードバックしてくれるのは、「この人は育てる価値がある」と思われている証拠だ。
逆に言えば、何も言われなくなったら、それは「見放された」サインだ。
ある企業の先輩社員はこう語る。
「新人の頃、上司にめちゃくちゃ怒られた。そのときは辛かったけど、今思えばあれは期待されてたんだなって。同期で早々に何も言われなくなった奴がいて、結局3年で辞めた。『優しい職場』だと思ってたらしいけど、実は誰も期待してなかっただけ」
先人たちの言葉には、「はたらく」ことの本質が詰まっている。
京セラ創業者・稲盛和夫氏は、こんな方程式を提唱している。
人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力
この方程式が示すのは、能力だけでは勝負にならないということだ。
「能力」と「熱意」は、それぞれ0点から100点まで。だから、能力が高くても努力を怠れば結果は出ない。逆に、自分には普通の能力しかないと思っても、誰よりも努力すれば、はるかに素晴らしい結果を残せる。
そして最も重要なのが「考え方」だ。これはマイナス100点からプラス100点まである。つまり、考え方次第で、人生は180度変わる。
能力 × 熱意 × 考え方 = 結果
この掛け算の意味を、学生のうちに理解しておくことが大切だ。
どんなに能力があっても、考え方がマイナスなら結果はマイナスになる。熱意があっても、間違った方向に進めば成果は出ない。
名言は、君たちの人生やキャリアの「地図」になる。道に迷ったとき、どっちに進めばいいかわからないとき、先人の言葉が指針になる。
大切なのは、これらの言葉を頭で理解するだけじゃなく、実際に行動に移すことだ。
「考え方 × 熱意 × 能力」を意識して、自分の行動を振り返ってみよう。今の君たちは、どこに力を入れるべきだろうか?
今、君たちはまだ守られている。
「学生だから」という理由で、失敗も許される。叱られても、それは期待されている証。社会人に話を聞ける特権もある。
でも、この立場は期限付きだ。
卒業と同時に、このクッションは消える。社会人になれば、結果を求められ、責任を背負い、叱られることも減る――なぜなら、叱る価値がないと判断されたら、何も言ってもらえなくなるからだ。
学生時代は、「守られながら実験できる時間」だ。
この時間を使い切った人と、なんとなく過ごした人では、社会人になってからのスタートラインが全然違う。
パーソル総合研究所の調査では、入社後に「こんなはずじゃなかった」と感じる新社会人は76.6%にのぼる。多くの人が、学生と社会人のギャップに苦しんでいる。
でも、このギャップを埋める準備は、学生のうちにできる。
叱られたり、挑戦したり、失敗したりできる時間を、今、使い切ろう。
未来の自分をつくるのは、今の行動だ。学生特権という最強カードを、今こそフル活用するときだ。
学生特権は今だけ。今、使い切ろう。
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