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【コース2-1】学生と社会人のリアルな違い ― 「叱られる価値」とアルバイトでは学べないこと|ステップ学習『はたらくを考える』

学生特権は"今だけの最強カード"、叱られなくなったら終わりだ。「守られながら実験できる時間」を活用しよう。

2026/01/07
【コース2の記事一覧は▶をクリック】
コース2仕事ってなんだ?「はたらく」をリアルに考える
2-1学生と社会人のリアルな違い ― 「叱られる価値」とアルバイトでは学べないこと
2-2大企業・スタートアップ・公務員 ― 働き方のリアル比較
2-3技術者からマネジメントへ ― キャリアの分かれ道を考える
2-4働き方と職場文化のリアル ― 自分の未来をどう選ぶ?
2-5正解はない ― キャリアにおける「納得探し」の考え方
2-6転職・起業・学び直しのリアル ― キャリアに正解はない
2-7人生150年時代を生き抜く ― AIとエンタメが変えるキャリアの新常識

学生特権は"今しか使えない最強カード"

「あの、お時間いただけますか?」

こう切り出せば、たいていの社会人は耳を傾けてくれる。学生という肩書きがあるうちは、だ。

実は、学生であることは想像以上に大きな特権だ。社会人に話を聞きやすく、熱心さは好意的に受け止められ、失敗しても「まだ学生だから」というクッションが効く。この立場は、社会人になった瞬間に消える。二度と戻ってこない。

卒論でのインタビューでも、キャリア相談でも、業界研究でも「学生です」と名乗るだけで、ドアは開く。これが社会人になると「何の用ですか?」に変わる。学生のうちに、この最強カードをフル活用しない手はない。

だが、この特権には「賞味期限」がある。そして多くの学生は、その価値に気づかないまま卒業していく。

 

学生と社会人は何が違うのか?

「学生と社会人って、何が違うんですか?」

この質問への答えは、一言で言えば「立場と責任の転換」だ。

学生は「学び手」、社会人は「成果を出す側」

学生時代、君たちの本分は「学ぶこと」だ。授業を受け、課題を提出し、試験に臨む。お金を払って教育を受ける側である。

一方、社会人はお金をもらって価値を生み出す側に立つ。学ぶことも大切だが、それは「成果を出すための手段」であって、学ぶこと自体が目的ではなくなる。

パーソル総合研究所の調査によると、「仕事を通じて成長したい」と思っている学生は86.2%にのぼるが、実際に成長を実感できている若手社会人1〜3年目は64.6%にとどまる。さらに衝撃的なのは、「働くことを楽しみたい」と考えている学生が79.3%いるのに対し、実際に楽しめている社会人はわずか35.3%という現実だ。

なぜこんなにギャップが生まれるのか?

それは、「守られる立場」から「結果を求められる立場」への視点転換がうまくいっていないからだ。学生のうちにこの転換の意味を理解し、準備することが、キャリアの出発点になる。

アルバイトと社員 ― 「時間を売る」か「価値を生む」か

「バイトで働いてるから、社会人の気持ちもわかります」

本当にそうだろうか?

アルバイト = 時給で働く、労働時間の対価

アルバイトの基本は「時間を売る仕事」だ。時給1,000円なら、1時間働けば1,000円もらえる。シフトに入った分だけ稼げるし、シフトが終われば基本的に責任も終わる。

「レジ打ちをする」「料理を運ぶ」「データ入力をする」――与えられたタスクをこなせば、それで十分だ。

社員 = 継続的に価値を生み出す存在

一方、正社員は「成果と価値を生み出す仕事」をする。

月給制だから、働いた時間そのものは直接給料に反映されない。その代わり、「どんな価値を生み出したか」「どう会社に貢献したか」が評価される。

アルバイトが労働時間の対価を受け取るのに対し、社員は継続的に成果を上げる責任を負う。しかも、責任範囲は自分の担当業務だけにとどまらない。チーム全体の成果、後輩の育成、業務改善――そういった「見えない仕事」も含まれる。

同じ「はたらく」でも、求められる基準がまるで違うのだ。

ある企業の人事担当者はこう語る。

「バイト経験がある学生は確かに社会性がある。でも、バイトと社員は別物。バイトでは『言われたことをやる力』は身につくけど、『自分で考えて動く力』や『責任を背負う覚悟』は育ちにくい。そこを理解してない学生は、入社後に苦労する」

 

叱ってもらえるのは期待されている証

「今の時代は、指導する側が厳しくできなくなって」

これは、イチロー氏が全国の高校野球部を訪れた際に繰り返し語っている言葉だ。

2023年11月、イチロー氏はある高校でこう語った。

「今の時代、指導する側が厳しくできなくなって。(中略)これは酷なことなのよ。高校生たちに自分たちに厳しくして自分たちでうまくなれって、酷なことなんだけど、でも今そうなっちゃっているからね。(中略)でも自分たちで厳しくするしかないんですよ」

イチロー氏が指摘しているのは、「厳しく指導されないこと」の危険性だ。

「やさしさの裏には残酷さがある」

叱られること、厳しく指導されることは、実は期待の証なのだ。

なぜなら、人は「この人は伸びる」と思う相手にこそ、真剣にフィードバックするからだ。逆に、「もうこの人には何を言っても無駄」と思われたら、指摘すらされなくなる。

指摘されないのは、無関心の証だ。

学生のうちは、まだ「叱ってもらえる」特権がある。先生も、先輩も、バイト先の店長も、まだ君たちに期待しているから、時には厳しいことも言ってくれる。

でも社会人になると、そうはいかない。上司も同僚も忙しい。わざわざ時間を使ってフィードバックしてくれるのは、「この人は育てる価値がある」と思われている証拠だ。

逆に言えば、何も言われなくなったら、それは「見放された」サインだ。

ある企業の先輩社員はこう語る。

「新人の頃、上司にめちゃくちゃ怒られた。そのときは辛かったけど、今思えばあれは期待されてたんだなって。同期で早々に何も言われなくなった奴がいて、結局3年で辞めた。『優しい職場』だと思ってたらしいけど、実は誰も期待してなかっただけ」

 

名言から学ぶ、仕事人のマインドセット

先人たちの言葉には、「はたらく」ことの本質が詰まっている。

稲盛和夫の「成果の方程式」

京セラ創業者・稲盛和夫氏は、こんな方程式を提唱している。

人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力

この方程式が示すのは、能力だけでは勝負にならないということだ。

「能力」と「熱意」は、それぞれ0点から100点まで。だから、能力が高くても努力を怠れば結果は出ない。逆に、自分には普通の能力しかないと思っても、誰よりも努力すれば、はるかに素晴らしい結果を残せる。

そして最も重要なのが「考え方」だ。これはマイナス100点からプラス100点まである。つまり、考え方次第で、人生は180度変わる。

能力 × 熱意 × 考え方 = 結果

この掛け算の意味を、学生のうちに理解しておくことが大切だ。

どんなに能力があっても、考え方がマイナスなら結果はマイナスになる。熱意があっても、間違った方向に進めば成果は出ない。

先人の言葉は「地図」になる

名言は、君たちの人生やキャリアの「地図」になる。道に迷ったとき、どっちに進めばいいかわからないとき、先人の言葉が指針になる。

大切なのは、これらの言葉を頭で理解するだけじゃなく、実際に行動に移すことだ。

「考え方 × 熱意 × 能力」を意識して、自分の行動を振り返ってみよう。今の君たちは、どこに力を入れるべきだろうか?

 

最後に 学生のうちに磨く「はたらく」準備

今、君たちはまだ守られている。

「学生だから」という理由で、失敗も許される。叱られても、それは期待されている証。社会人に話を聞ける特権もある。

でも、この立場は期限付きだ。

卒業と同時に、このクッションは消える。社会人になれば、結果を求められ、責任を背負い、叱られることも減る――なぜなら、叱る価値がないと判断されたら、何も言ってもらえなくなるからだ。

だからこそ、学生特権を武器に動き出そう

  • 社会人の話を聞きに行く ― 学生だからこそ、ドアは開く
  • 叱られることを恐れない ― フィードバックは成長の糧
  • 失敗を恐れずチャレンジする ― 今なら許される
  • アルバイトを「ただの稼ぎ」で終わらせない ― 「社員思考」で働いてみる

学生時代は、「守られながら実験できる時間」だ。

この時間を使い切った人と、なんとなく過ごした人では、社会人になってからのスタートラインが全然違う。

パーソル総合研究所の調査では、入社後に「こんなはずじゃなかった」と感じる新社会人は76.6%にのぼる。多くの人が、学生と社会人のギャップに苦しんでいる。

でも、このギャップを埋める準備は、学生のうちにできる。

叱られたり、挑戦したり、失敗したりできる時間を、今、使い切ろう。

未来の自分をつくるのは、今の行動だ。学生特権という最強カードを、今こそフル活用するときだ。

 

参考文献

 

この記事を読んだ君たちへの次の一歩

  • 気になる業界で働く社会人に、話を聞きに行ってみよう
  • インターンシップに参加して、「社員思考」で働いてみよう
  • 先輩や教授に、遠慮せずにフィードバックを求めてみよう

学生特権は今だけ。今、使い切ろう。

 

次の章はこちら→【コース2-2】 大企業・スタートアップ・公務員 ― 働き方のリアル比較