キャリアに正解はない。3人に1人が後悔するデータから、「正解探し」をやめ、納得をつくるキャリア戦略を解説。
「この選択は正しいのだろうか?」
就活中、誰もが一度はこう自問する。大企業かベンチャーか、技術職か総合職か、東京か地方か。選択肢の前で立ち止まり、「正解」を探そうとする。だが、ここではっきり言っておく。キャリアに正解などない。
厚生労働省が2024年10月に発表した「新規学卒就職者の離職状況」によれば、大学卒の新卒者の34.9%が3年以内に離職している[¹]。3人に1人以上だ。しかもこの数字は3年連続で上昇し、過去最高水準に近づいている。
さらに、リクナビの調査では、就職活動を振り返って後悔している社会人は約3割(33.2%)に上る[²]。つまり、3人に1人は「あのとき別の選択をしていれば」と思っているのだ。
これらのデータが示すのは、どれだけ慎重に選んでも、思い通りにいかない現実だ。「正解」を選んだはずなのに、入社後にギャップを感じ、後悔し、辞めていく。正解探しという行為そのものが、幻想なのだ。
だからこそ、発想を転換する必要がある。「正解はどれか?」ではなく、「どうすれば納得できるか?」と考えるのだ。これがキャリアにおける「納得探し」の考え方である。
リクルートマネジメントソリューションズが2024年12月に発表した調査結果は、示唆に富んでいる。キャリア選択への納得感が高い人ほど、入社後の勤続意向が強く、心身の健康状態が良好で、組織へのコミットメントも高い[³]。
つまり、「正しい選択をしたか」ではなく、「自分の選択に納得しているか」が、その後のキャリアの質を決めるのだ。
逆に言えば、どんなに客観的に見て「良い企業」に入っても、本人が納得していなければ、不満は募り、パフォーマンスは下がり、結局辞めることになる。実際、転職後に不満を感じる人の割合は11.4%[⁴]だが、転職者の約4人に1人(26%)が転職を後悔しており[⁵]、転職者の7割以上が転職後にマイナスギャップを実感している[⁶]。
つまり、転職してもまた同じことが起きる。なぜなら、「正解探し」をやめない限り、どこに行っても納得できないからだ。
「でも、納得するためには、計画的にキャリアを築く必要があるのでは?」
そう思うかもしれない。だが、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したプランドハプンスタンス理論(計画的偶発性理論)は、その常識を覆す[⁷]。

この理論の核心は、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な事象によって決定される」というものだ。つまり、どれだけ綿密に計画しても、実際のキャリアは偶然の出会い、予期せぬ異動、思いがけないチャンスによって形作られる。
だからこそ、クランボルツ教授は「偶然を計画的に設計する」ことを提唱した。具体的には、以下の5つの行動特性を持つことで、偶然を自分に有利に働かせられるという。
この理論が教えてくれるのは、「正解を探すのではなく、偶然を活かす姿勢を持て」ということだ。納得探しとは、まさにこの姿勢を指す。
先述したように、大学卒の新卒者の34.9%が3年以内に離職している[¹]。高校卒ではさらに高く、38.4%だ。この数字は2年連続で上昇している。
離職理由のトップは「上司や同僚との人間関係」が26.3%、「社風が合わなかった」が26.1%[⁸]。つまり、入社前には見えなかった現実に直面して、辞めていくのだ。
どれだけ企業研究をしても、実際に働いてみなければわからないことは多い。上司がどんな人か、同僚とウマが合うか、社風が自分に合っているか。これらは運の要素が大きい。
「では、自分でキャリアを主体的に築けばいいのでは?」
その通りだ。だが、これもまた簡単ではない。
パーソル総合研究所の調査によれば、キャリア自律の度合いは20代をピークに40代にかけて低下していく[⁹]。また、リクルートマネジメントソリューションズの調査では、約8割が「自律的・主体的にキャリア形成をしたい」と答えているにもかかわらず、約6割は「ストレスや息苦しさを感じる」と回答している[¹⁰]。
つまり、理想と現実のギャップに多くの人が苦しんでいるのだ。主体的にキャリアを築きたいと思っても、組織の制約、家族の事情、経済的な理由など、様々な要因が思い通りにさせてくれない。
ここで重要なのは、「思い通りにならないことを前提にする」という姿勢だ。
「完璧な選択をすれば、うまくいく」と考えるから、うまくいかなかったときに絶望する。だが最初から「うまくいかないこともある」と思っていれば、失敗しても「想定内」として受け止められる。
これは諦めではない。現実を冷静に見据えた上で、戦略的に行動する姿勢だ。
納得探しとは、受け身ではない。自分で納得できる状況を戦略的に作り出していくことだ。
具体的には、以下のような行動を指す。
いきなり「一生の選択」をしようとするから、プレッシャーに押しつぶされる。そうではなく、小さく試して、合わなければ修正するという発想が重要だ。
例えば、「大企業かベンチャーか」で悩むなら、まずは大企業に入り、副業でベンチャーの仕事を経験してみる。逆に、ベンチャーに入ってから、将来大企業に転職する道もある。
プランドハプンスタンス理論が示すように、キャリアの8割は偶然で決まる[⁷]。ならば、最初の選択にこだわりすぎず、柔軟に軌道修正していく姿勢が大切だ。
納得するためには、根拠が必要だ。自分がなぜこの選択をしたのか、言語化しておくことが重要だ。
「なんとなく」ではなく、「この企業を選んだのは、○○の技術を学べるからだ」「地方で働くのは、生活コストを抑えながらキャリアを築きたいからだ」といった理由を明確にする。
そうすることで、うまくいかなかったときも「この経験から○○を学んだ」と前向きに捉えられる。納得感は、後付けでも構わない。大切なのは、自分の選択に意味を見出すことだ。
思い通りにいかない前提で動くなら、逃げ道を用意しておくのも戦略だ。
例えば、スキルを身につけておけば、今の会社が合わなくても転職できる。副業を始めておけば、独立の選択肢も生まれる。地方で働くなら、リモートワークができるスキルを持っておけば、選択肢が広がる。
これは「逃げ」ではなく、リスクヘッジだ。納得して働くためには、「最悪の場合でも何とかなる」という安心感が必要だ。
プランドハプンスタンス理論が教えるように、偶然はキャリアを大きく左右する[⁷]。ならば、偶然が起きる確率を上げる行動を取ればいい。
具体的には、
こうした行動が、予期せぬチャンスを引き寄せる。
キャリアに正解はない。だが、納得はつくれる。
大学卒の3人に1人が3年以内に辞め[¹]、就活を振り返って3人に1人が後悔し[²]、転職しても4人に1人が後悔する[⁵]。この現実が示すのは、「正解を選べばうまくいく」という幻想の崩壊だ。
だからこそ、発想を変えよう。
「正解はどれか?」ではなく、「どうすれば納得できるか?」と考える。思い通りにいかない前提で、小さく試し、軌道修正し、偶然を味方につけながら、自分なりの納得を積み重ねていく。
リクルートマネジメントソリューションズの調査が示すように、納得感が高い人ほど、キャリアの質は高まる[³]。つまり、納得探しこそが、キャリアの正攻法なのだ。
正解がないからこそ、自由だ。 正解がないからこそ、自分で納得をつくれる。
この考え方を持てるかどうかが、これからのキャリアを左右する。