【コース2-2】大企業・スタートアップ・公務員 ― 働き方のリアル比較|ステップ学習『はたらくを考える』
それぞれのメリット・デメリットを比較。理系視点で、変化の時代に生き残る「組織に依存しないキャリア戦略」を考える。
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「働く場所」で人生は大きく変わる
「どんな会社に入るか」――就活生なら誰もが直面する、この選択。
大企業を目指すか、スタートアップで挑戦するか、それとも公務員という安定を取るか。この選択が、君たちの30代、40代の姿を決める。
しかし、ここで重要なのは「どの選択肢が正解か」ではない。
大企業に入れば安泰か? スタートアップなら成長できるのか? 公務員は本当に安定なのか?
実は、それぞれにメリットもリスクもある。そして最も大切なのは、「組織に守ってもらう」という発想ではなく、どこに行っても価値を生み出せる自分をつくることだ。
この記事では、大企業・スタートアップ・公務員、それぞれの「働き方のリアル」を比較する。給与、安定、成長スピード、裁量の違いに加え、「変化の時代に生き残れるか」という視点も忘れてはいけない。

大企業のリアル ― 「安定」の光と影
🌱メリット 給与水準と教育と社会的信用
大企業の魅力は、何と言っても「安定」だ。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、2024年の大卒新規学卒者の平均給与は約24万8千円(前年比4.6%増)。特に大企業(従業員1,000人以上)は、中小企業に比べて初任給が高く、年収ベースでも約10.8万円ほど高い傾向がある。
さらに、教育制度や福利厚生が充実している。新人研修、OJT、資格取得支援、社宅制度――こうした「育ててもらえる環境」は、大企業ならではの強みだ。
社会的信用も厚い。ローンを組むとき、クレジットカードを作るとき、「大企業勤務」という肩書きが信用力になる。
⚡課題 「中抜き業務」とAI代替のリスク
だが、大企業にいれば安泰か? 答えはNOだ。
大企業の社員でも、実際には「ベンダーマネジメント」や「調整業務」ばかりで、自ら手を動かさないまま経験を積んでしまう人がいる。
野村総合研究所(NRI)の調査によると、中間管理職が従事している業務のうち、デジタル化によって削減できる可能性は46.7%に達する。つまり、大企業の中間管理職でも、「調整」や「橋渡し」だけの仕事は、AIやシステムに代替されやすいのだ。
ある大手メーカーの30代社員はこう語る。
「入社して10年、ほぼベンダーとの調整ばかり。自分で技術的な判断ができない。正直、このままじゃヤバいと思ってる。転職しようにも、何ができるのか説明できない」
💡未来の分岐点 「変われる大企業」と「変われない大企業」
大企業も二極化している。
東京商工リサーチの調査によると、2024年に「早期・希望退職募集」を実施した上場企業は57社、募集人数は1万9人に達した。3年ぶりに1万人を超え、前年の3倍に急増。しかも、直近決算で黒字だった企業が約6割(59.6%)を占める。
つまり、「業績が悪いからリストラ」ではなく、「将来を見据えた構造改革」として早期退職を実施する企業が増えているのだ。
- オムロン:構造改革プログラムで1,000人募集
- 資生堂:「ミライシフトNIPPON2025」で1,500人募集
- コニカミノルタ:グローバル構造改革で2,400人募集
- シャープ:堺ディスプレイプロダクト従業員500人募集
- リコー:セカンドキャリア支援制度で1,000人募集
- 富士通:200億円の費用計上を発表
- 日産自動車:グローバルで9,000人の人員削減
変化を続け競争力を保つ大企業と、変われず衰退しリストラや早期退職を迫る大企業――。学生時代から「企業が変われているかどうか」を見極める目が必要だ。
スタートアップのリアル ― 「成長」と「リスク」の両面

🌱魅力 成長スピードと裁量
スタートアップの最大の魅力は、成長スピードだ。
若手でも裁量を与えられやすく、経営者に近い距離で学べる。大企業なら3年かかる経験が、スタートアップなら1年で手に入る――そんな声もある。
日本経済新聞の調査によると、2021年度のスタートアップ企業の平均年収は前年比約7%増の650万円で、上場企業の平均年収605万円を上回る水準だ。成長フェーズのスタートアップでは、ストックオプションなど将来のリターンも期待できる。
⚡リスク 「倒産」という現実
だが、スタートアップには明確なリスクがある。
中小企業庁の「2023年版中小企業白書」によると、日本における起業後5年の企業生存率は80.7%。一見高く見えるが、裏を返せば約2割の企業が5年以内に消えている。
さらに、日本の生存率は諸外国と比較すると高い。米国の新設事業所の5年生存率は概ね50〜55%。半数は5年を待たず市場から退くという厳しさだ。
資金調達や事業モデルがうまくいかないと、会社ごと消えてしまうこともある。安定とは程遠い世界だ。
💡「安定志向かどうか」は見抜かれる
マイナビの「2026年卒大学生就職意識調査」によると、企業選択のポイントで「安定している会社」が51.9%で初めて5割を超え、7年連続で最多。一方、「絶対にベンチャー企業が良い」と答えた就活生はわずか10.5%にとどまる。
最近は「スタートアップ的な気風を持つ上場企業」に多くの学生が集まる傾向があるが、人事担当者は「安定志向での応募かどうか」を見抜いている。
「スタートアップで挑戦したい」と言葉で言うのは簡単だ。しかし、実際に挑戦してきた行動や、それを裏付ける説得力がなければ、面接で見透かされる。
ある成長企業の採用担当者はこう語る。
「『挑戦したい』って言う学生は多いけど、実際に何か挑戦してきた人は少ない。サークルでもゼミでもバイトでもいい。何か自分で考えて動いた経験があるかどうかで、本気度がわかる」
公務員のリアル ― 「安泰」という幻想
🌱イメージ 安定・安泰
公務員といえば、「安定」「安泰」というイメージが強い。
終身雇用、定年まで働ける、景気に左右されない――こうしたイメージから、親世代には根強い人気がある。
⚡現実 応募者減少と合格のチャンス
しかし、公務員も決して「安泰」ではない。
人事院の「2025年度国家公務員採用総合職試験の申込状況」によると、院卒者試験及び大卒程度試験を合計した申込者数は12,028人で、昨年度と比べ11.6%減少した。
国家公務員一般職(大卒程度)も、2024年度の申込者は前年度比7.9%減の2万4,240人で、現行の試験が始まった2012年度以降で過去最少を記録した。
応募者数が減っているということは、競争倍率が下がり、合格しやすくなっているということだ。
地方公務員も同様だ。総務省の調査によると、地方公務員試験の受験者数は平成25年度の583,541人から令和4年度には438,651人まで減少。競争倍率も低下傾向にあり、令和4年度の地方公務員試験の競争倍率は過去30年で最低の5.2倍を記録した。

🌱魅力 地域社会を支えるやりがい
公務員の魅力は、地域社会や国を支えるやりがいだ。
最近では民間と連携した新しい取り組みも増えており、「役所仕事=古い」というイメージも変わりつつある。
人事院が2024年度の採用職員に対して実施したアンケートによると、「定年まで公務員生活を続けたい」と答えた人は47.5%。半数近くが長期的なキャリアを見据えている。
⚡課題 本当に「安泰」なのか?
しかし、公務員も変化を求められている。
財政難、政情不安、優秀人材の減少――こうした逆風の中で、今後も本当に「安泰」と言えるのか?
人口減少に伴う税収減、高齢化に伴う社会保障費の増大――こうした構造的な問題を抱える中で、公務員の働き方も変革を迫られている。
結び ― 生き残る人材の条件
働く場所に正解はない。
大企業もスタートアップも公務員も、それぞれにメリットもあれば、リスクもある。
大切なのは「組織に依存しない力」
大切なのは「組織に依存する」のではなく、自分自身を磨き続けること。
大企業に入っても、ベンダーマネジメントだけでスキルが身につかなければ、AIに代替される。スタートアップで挑戦しても、会社が倒産すれば次を探さなければならない。公務員になっても、社会構造の変化に対応できなければ、やりがいを見失う。
世の中が変わったときに、環境に適応できる力こそが最大の武器だ。
変化を恐れず、価値を生み出せる人材を目指そう
マイナビの調査によると、2026年卒の就活生の企業選択ポイントで「安定している会社」が51.9%で7年連続最多。学生の安定志向は年々高まっている。
だが、「安定」を求めすぎると、変化に対応できなくなるリスクがある。
大企業も、スタートアップも、公務員も――どこに行っても、変化を恐れず、自分を磨き続ける姿勢が求められる。
どの道を選んでも価値を生み出せる人材を目指そう。それが、不確実な時代を生き抜く唯一の方法だ。🔥
参考文献
- 人事院「2025年度国家公務員採用総合職試験の申込状況等について」(2025年3月10日) https://www.jinji.go.jp/kouho_houdo/kisya/2503/sougoumousikomi.html
- マイナビ「2026年卒大学生就職意識調査」(2025年4月23日) https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250423_95696/
- 東京商工リサーチ「2024年の『早期・希望退職』 3年ぶり1万人超 募集社数57社」(2025年1月10日) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200844_1527.html
- 中小企業庁「2023年版中小企業白書 第2節 起業・創業」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusho/2023/chusho/b2_2_2.html
- 野村総合研究所「AI/DX後は中間管理職の仕事の半分が不要に NRI研究」(2021年11月4日) https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01687/00048/
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2024年)
- 総務省「地方公務員における働き方改革に係る状況」(令和5年12月25日)
この記事を読んだ君たちへの次の一歩
- 気になる企業が「変化に対応できているか」を調べてみよう
- スタートアップのインターンシップに参加して、リアルな現場を体感してみよう
- 公務員の仕事内容を深掘りして、イメージと現実のギャップを確認してみよう
どの道を選んでも、自分を磨き続けることを忘れずに。
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