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【コース2-7】人生150年時代を生き抜く ― AIとエンタメが変えるキャリアの新常識|ステップ学習『はたらくを考える』

人生150年×AI時代。理系こそ技術に創造性とエンタメを掛け、80歳まで価値を生み続けるキャリア戦略を描く。

2026/02/24
【コース2の記事一覧は▶をクリック】
コース2仕事ってなんだ?「はたらく」をリアルに考える
2-1学生と社会人のリアルな違い ― 「叱られる価値」とアルバイトでは学べないこと
2-2大企業・スタートアップ・公務員 ― 働き方のリアル比較
2-3技術者からマネジメントへ ― キャリアの分かれ道を考える
2-4働き方と職場文化のリアル ― 自分の未来をどう選ぶ?
2-5正解はない ― キャリアにおける「納得探し」の考え方
2-6転職・起業・学び直しのリアル ― キャリアに正解はない
2-7人生150年時代を生き抜く ― AIとエンタメが変えるキャリアの新常識

人生100年時代から150年時代へ?

「人生100年時代」という言葉を聞いて、「まだ先の話」と思っていないだろうか。実はこの話、すでに現実になりつつある。 

厚生労働省の最新データ(2023年)によれば、日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.14年に達している。そして2060年には男性84.19年、女性90.93年になると予測されている。さらに衝撃的なのは、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授の研究だ。彼女は「2007年に生まれた日本の子どもの半数が107歳より長く生きる可能性がある」と指摘している。

つまり、今20代前半の理系学生である君たちは、100歳どころか110歳、120歳まで生きる可能性すらあるのだ。

ここで冷静に計算してみよう。大学を22歳で卒業し、従来の「60歳定年」モデルで引退すると、残りの人生は50年以上。もし70歳まで働いても、その後40年以上の「引退後」が待っている。年金だけで生活できるのか? 貯金は足りるのか? そもそも、50年間も「何もしない」人生に耐えられるのか?

答えは明白だ。「教育→仕事→引退」という3ステージモデルは、もはや機能しない。

実際、65〜69歳の労働力人口比率は53.5%、70〜74歳でも34.5%が働いている。高年齢者雇用安定法の改正(2021年4月)により、企業には70歳までの就業確保が努力義務として課されている。つまり、「80歳まで働く」が当たり前になる時代がすぐそこまで来ているのだ。

しかし、ここで立ち止まって考えてほしい。君たちは80歳まで、今と同じ働き方を続けられるのか? そもそも、今の仕事は80歳まで存在しているのか?

この問いに答えるには、もう一つの巨大な波を理解する必要がある。AI(人工知能)の進化だ。

 

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AI時代、働く意味はどう変わるのか

「AIに仕事を奪われる」という話は、もはやSFではない。すでに現実として動き始めている。

野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究(2015年)は、衝撃的な結論を出した。日本の労働人口の約49%が、今後10〜20年で人工知能やロボット等によって技術的に代替可能になるというのだ。

代替可能性が高い職業には、一般事務員、データ入力係、銀行窓口係、レジ係、製造ラインの作業員などが含まれる。一方、代替可能性が低い職業は、アートディレクター、経営コンサルタント、医師、教師、保育士など、創造性、協調性、非定型的な業務を必要とする仕事だ。

さらに最新の状況はもっと深刻だ。2024年の大和総研の分析によれば、生成AI(ChatGPTのような大規模言語モデル)の登場により、状況は加速している。IMFの分析では、世界の雇用の約40%(先進国では60%)がAIの影響を受けると予測されている。

日本の職業を分析すると、約20%が「協働グループ」(AIを活用して付加価値業務に注力する管理職・専門職)、約20%が「代替グループ」(仕事の主要部分がAIに代替されやすいプログラマーや一般事務)に分類される。興味深いのは、協働グループの平均年収は高く、代替グループの平均年収は低いという傾向だ。

実際、2024年時点で企業のAI活用率は72%(2023年の50%から急上昇)、生成AI活用率は65%(2023年の33%から倍増)に達している。米国では職場での大規模言語モデル利用率が、2024年12月の30.1%から2025年3〜4月には43.2%に増加した。日本企業の約20%が生成AI導入に伴い雇用削減を実施している。

ここで重要なのは、「AIに奪われる」と嘆くことではない。「AIと協働する」戦略を立てることだ。

野村総研の研究が示すように、創造性、協調性、非定型業務は人間の領域として残る。つまり、「マニュアル通り」「ルーティン」「定型業務」から脱却し「人間にしかできない価値」を提供できる人材になることが、80歳まで働く時代のキャリア戦略の核心となる。

では、「人間にしかできない価値」とは何か? その答えの一つが、次の章で述べる「エンタメ」にある。

 

未来の仕事像 ― エンタメ最強説?

「エンタメ」と聞くと、芸能人やYouTuberといった一部の人だけの世界だと思うかもしれない。しかし、実はエンタメ・クリエイティブ産業は、世界で最も急成長している産業の一つであり、AI時代に最も強い産業でもある。

経済産業省のデータ(2024年)によれば、世界のコンテンツ市場規模は約135兆円(2023年)に達し、日本は世界第3位の約12.4兆円(2022年)の市場を持つ。世界市場は年平均成長率5%で2027年まで成長すると予測されている。日本のコンテンツ産業の海外展開は約5.7兆円(2023年)で、政府は20兆円を目標に掲げている。

さらに注目すべきは「エンタメテック」市場だ。現在3.06兆円の市場が、5年後には6.04兆円になると予測されており、年平均成長率は14.6%に達する。

なぜエンタメがこれほど強いのか? 答えは単純だ。人間の「感情」「体験」「物語」は、AIには代替できないからだ。

AIは文章を書ける。絵も描ける。音楽も作曲できる。しかし、AIは「人を感動させる物語」を人間の経験から紡ぎ出すことはできない。AIは「共感」を生み出せない。AIは「その場の空気を読んで即興で対応する」ことができない。

野村総研の研究でも、アートディレクター、ミュージシャン、映画監督、脚本家といったクリエイティブ職は「AI代替可能性が低い」職業に分類されている。大和総研の分析でも、創造性と協調性を要する職業は「協働グループ」として高年収を維持すると予測されている。

そして重要なのは、「エンタメ」は芸能人だけの領域ではないということだ。理系の技術者でも、以下のような形でエンタメと関わることができる:

  • ゲーム開発:プログラミング技術で感動的な体験を創造
  • VR/AR技術:仮想空間での新しい体験をデザイン
  • 音響技術:ライブやイベントの感動を技術で支える
  • データサイエンス×エンタメ:視聴者データを分析してコンテンツを最適化
  • ロボティクス×パフォーマンス:ロボットと人間の協働パフォーマンスを創造

エンタメテック市場の年平均成長率14.6%という数字は、技術とエンタメの融合がいかに巨大なチャンスかを物語っている。

人生150年時代、80歳まで働く時代において、「人を楽しませる」「人に感動を与える」「人の心を動かす」スキルは、最強の武器になる。

 

自然の中の人間という視点

ここまで、AI時代のキャリア戦略として「創造性」「協調性」「非定型業務」が重要だと述べてきた。しかし、もう一つ忘れてはならない視点がある。それは、「自然の中の人間」という視点だ。

私たちはつい、テクノロジーの進化に目を奪われ、「効率化」「最適化」「生産性向上」といった言葉に踊らされがちだ。しかし、人間は機械ではない。人間は生物であり、自然の一部なのだ。

80歳まで働く時代において、最も重要なのは「健康」だ。厚生労働省のデータによれば、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)には大きな差がある。2022年時点で、男性の健康寿命は72.57年、女性は75.45年だ。つまり、平均寿命まで生きたとしても、男性は約8.5年、女性は約11.7年を「不健康な状態」で過ごすことになる。

80歳まで働くためには、健康寿命を延ばす必要がある。そのためには、以下のような「自然な生き方」を意識することが重要だ:

  • 適度な運動:デスクワーク中心の生活から脱却し、身体を動かす習慣
  • 睡眠の質:夜更かしや不規則な生活を避け、自然なリズムで生活
  • 食事のバランス:加工食品やファストフードに頼らず、自然な食材を摂取
  • ストレス管理:自然と触れ合い、心の健康を保つ
  • 社会的つながり:孤立を避け、人とのつながりを大切にする

65〜69歳の労働力人口比率が53.5%、70〜74歳でも34.5%という数字は、多くの高齢者が働き続けていることを示している。しかし、これは単に「生活費のため」だけではない。働くことそのものが、健康維持と社会的つながりの手段になっているのだ。

ロンドン大学の研究によれば、引退後に社会的活動を続けている人は、引退後に孤立する人よりも健康寿命が長い傾向がある。つまり、「80歳まで働く」ことは、単なる経済的必要性ではなく、健康で充実した人生を送るための戦略でもあるのだ。

そして、ここでもエンタメの重要性が浮かび上がる。エンタメ産業は、人と人とのつながりを生み出し、感動や喜びを提供する。「人を楽しませる」仕事は、自分自身も楽しみながら、長く続けられる仕事なのだ。

AI時代において、私たちは「効率化」だけを追求するのではなく、「人間らしさ」「自然な生き方」「心身の健康」を大切にしながらキャリアを設計する必要がある。

 

未来を読み、自分の可能性を最大化する

ここまで、人生150年時代、AI時代、エンタメ最強説、そして自然の中の人間という視点から、キャリア設計について考えてきた。最後に、具体的なアクションプランをまとめよう。

① 80歳まで働く前提でキャリアを設計する

従来の「22歳〜60歳まで働いて引退」というモデルは崩壊した。80歳まで働く前提で、以下のような「マルチステージ」のキャリアを設計しよう:

  • 20代〜30代:スキルの土台を築く(技術力、問題解決力、協調性)
  • 40代〜50代:専門性を深めると同時に、マネジメントや協働スキルを磨く
  • 60代〜70代:経験を活かして後進を育てる、コンサルタントやアドバイザーとして活動
  • 70代〜80代:自分のペースで、社会とつながり続ける(パートタイム、ボランティア、趣味の延長)

② AI代替されないスキルを磨く

野村総研の研究と大和総研の分析が示すように、創造性、協調性、非定型業務はAI代替されにくい。具体的には:

  • 技術×創造性:プログラミング技術を使ってゲームやコンテンツを創造
  • 技術×協調性:チームで新しいプロダクトを生み出すプロジェクトマネジメント
  • 技術×非定型業務:顧客の個別ニーズに対応するカスタマイズ開発

生成AIの活用率が65%に達している今、AIを「脅威」ではなく「協働パートナー」として使いこなすスキルが重要だ。

③ エンタメ・クリエイティブの要素を取り入れる

世界135兆円、日本12.4兆円のコンテンツ市場は、技術者にとっても巨大なチャンスだ。以下のような形で、エンタメ要素をキャリアに取り入れよう:

  • 副業・趣味としてコンテンツ制作:YouTubeでの技術解説、Qiitaでの記事執筆、個人ゲーム開発
  • エンタメテック企業への転職:ゲーム会社、VR/AR企業、音響技術企業
  • 本業にエンタメ要素を持ち込む:技術プレゼンをエンタメ化、社内イベントの企画

エンタメテック市場の年平均成長率14.6%という数字は、この分野がいかに将来性があるかを示している。

④ 健康寿命を延ばす生活習慣を今から築く

健康寿命と平均寿命の差が男性8.5年、女性11.7年という現実を直視しよう。80歳まで働くためには、今から健康習慣を築くことが不可欠だ:

  • 運動習慣:週3回、30分の運動(ジョギング、筋トレ、ヨガなど)
  • 睡眠の質:7〜8時間の睡眠、規則正しい生活リズム
  • 食事のバランス:野菜・果物・タンパク質をバランスよく摂取
  • ストレス管理:自然と触れ合う、趣味を持つ、人とのつながりを大切にする

⑤ 学び続ける習慣を持つ

80歳まで働く時代、「学び直し」は一度だけではなく、何度も繰り返すことになる。以下のような学習習慣を持とう:

  • 毎日30分の読書・学習:新しい技術、ビジネストレンド、人間心理学など
  • オンライン講座の活用:Coursera、Udemy、YouTube Educationなど
  • 実践を通じた学習:副業、個人プロジェクト、ハッカソン参加

 

最後に ― 未来は「読む」ものではなく「創る」もの

ここまで、様々なデータや予測を示してきた。しかし、最も重要なのは、未来は「予測」するものではなく「創造」するものだということだ。

人生150年時代、AI時代、エンタメ最強時代――これらはすべて「可能性」であって「確定した未来」ではない。君たちがどう行動するかによって、未来は変わる。

65〜69歳の53.5%、70〜74歳の34.5%が働き続けているという事実は、「働き続けることが可能な時代」を示している。しかし同時に、「働き続けなければ生活できない時代」でもある。

君たちは、どちらの未来を選ぶのか?

「仕方なく80歳まで働く」のか、「やりたいことを80歳まで続ける」のか。

この選択は、今、この瞬間から始まっている。

AI代替率49%、生成AI影響率40〜60%という数字に怯えるのではなく、「自分にしかできない価値」を磨く戦略を取ろう。世界135兆円のコンテンツ市場という巨大なチャンスに目を向けよう。そして何より、健康で、人とつながり、心豊かに生きるための選択を、今からしよう。

人生100年時代は、もはや「未来の話」ではない。人生150年時代すら、視野に入れるべき現実だ。

君たちのキャリアは、まだ始まったばかりだ。80歳まで、いや、100歳まで続く長い旅の、ほんの序章に過ぎない。

未来を読み、自分の可能性を最大化する。その第一歩を、今、踏み出そう。

 

次のコースはこちら→【コース3-1-1】 働く意味と経済活動の本質

 

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参考文献

  • 厚生労働省(2024)「令和5年簡易生命表の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/dl/life23-15.pdf
  • 内閣府(2024)「令和6年版高齢社会白書」 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_2_1.html
  • 野村総合研究所・オックスフォード大学(2015)「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」 https://www.nri.com/content/900037164.pdf
  • 大和総研(2024)「生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策」 https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20240425_030145.pdf
  • 各種AI活用調査(2024年):McKinsey Global Institute, IMF等の報告を総合
  • 経済産業省(2024)「コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/
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