どの道を選んでも完全な正解は存在しない。大切なのは、自分が納得できるかどうかだ。「正解探し」ではなく「納得探し」をしよう。
「この会社に入れば安心だ」 「この道を選べば間違いない」
就活の時点で、多くの学生がこう考える。だが、それは幻想だ。
マイナビの調査によれば、2024年における正社員の転職率は7.2%。つまり、約14人に1人が転職している計算だ。特に20代男性では13.4%、20代女性では11.3%と、若い世代ほど転職率が高い。
さらに興味深いのは、40-50代の転職率が増加傾向にあることだ。40代女性は前年比+0.9ポイント、50代女性は+0.5ポイント、40代男性も+0.3ポイント上昇している。つまり、キャリアの分岐点は新卒時だけではなく、社会人になってからも何度も訪れるのだ。
「一度入社したら定年まで」という昭和的なキャリア観は、もはや現実と乖離している。キャリアには唯一の正解など存在しない。転職・起業・学び直しは、それぞれにリスクと可能性を持つ選択肢であり、どの道を選んでも「自分が納得できる選択を積み重ねる」ことこそがキャリアを形作るのだ。
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転職は、自分の成長環境を変えるための最も現実的な手段だ。新しい挑戦やスキルを得られる可能性がある一方、安定した基盤を失うリスクも存在する。
マイナビの調査では、2024年に転職した人の転職理由トップは「給与が低かった」(25.5%)だった。転職先の決定理由でも「給与が良い」(25.9%)が最多で、給与への不満が転職の大きな動機となっていることがわかる。
では、転職によって実際に給与は上がるのか?
同調査によれば、転職後の平均年収は509.3万円で、転職前の487.3万円よりも22.0万円高い。転職後に年収が上がった割合は39.4%で、特に30代男性(49.5%)、40代男性(47.9%)で割合が高い。転職による年収増加額が最も大きかったのは40代男性の34.4万円だった。
つまり、約4割の人は転職で年収を上げている一方で、約6割は年収が変わらないか下がっている可能性がある。
ただし、転職すればすべてが解決するわけではない。
前回の記事で紹介したように、転職者の約4人に1人(26%)が転職を後悔しており、転職者の7割以上が転職後にマイナスギャップを実感している。転職に失敗したと感じる理由として「職場の雰囲気が悪い」(17.8%)、「人間関係が悪い」(12.6%)など、職場環境が悪い理由が上位を占めている。

つまり、「逃げの転職」と「挑戦の転職」は結果が大きく異なる。
転職は環境を変える手段であって、問題を解決する魔法ではない。自分が何を変えたいのか、何を得たいのかを明確にすることが、転職の成否を分ける。
起業は、裁量とスピードを最大限手にできる選択肢だ。成功すれば大きなやりがいと成果を得られるが、失敗すれば生活や人間関係にまで影響が及ぶ。
中小企業庁の「中小企業白書2023」によれば、日本の開業率は2021年度で4.4%、廃業率は3.6%と、諸外国と比較して相当程度低水準である。また、起業後の企業生存率は、1年後で95.3%と高いものの、5年後には81.7%まで低下する。
欧米諸国のデータを見ると、起業後5年の生存率は50%を下回る国が多く、起業して5年を超えて生き残ることの厳しさがうかがえる。
興味深いのは、起業した経営者の満足度だ。
中小企業白書によれば、創業後5-9年経過した経営者に「事業に対して現在満足していること」を聞くと、「仕事のやりがい・達成感」が最も多く、次いで「仕事の業務内容」だった。つまり、生き残った経営者の多くは、事業に対して満足感を得ている。
一方、起業の準備段階で生じた課題としては、「事業に必要な専門知識、経営に関する知識・ノウハウが不足していた」が最多で、次いで「資金調達方法の目処がつかなかった」が挙がっている。
起業のリアルは、「自由」と「責任」がセットであるということだ。すべての裁量を手にする代わりに、すべての責任を自ら負う必要がある。売上が立たなければ給料はゼロ、資金繰りに失敗すれば会社は潰れる。
だが、その厳しさを乗り越えた先に、サラリーマン時代には味わえなかったやりがいがある。起業は「逃げ道」ではなく、覚悟を持って挑む道だ。
いきなり起業するのはリスクが高い。ならば、副業やパラレルキャリアから始めるという選択肢がある。
エン・ジャパンの調査によれば、ミドル世代(35歳以上)の23%がパラレルキャリア/副業に取り組んでおり、特に30代では33%に達する。パラレルキャリア/副業を始めた理由のトップは「複数の収入源を持ち、経済的に安定するため」(50%)、次いで「本業では得られない経験やスキルを積むため」(46%)だった。
副業によって得られた年収は、100万円以上が約2割に上る。つまり、本業を続けながら、起業の準備や小規模なビジネスを試すことができるのだ。
起業は「ゼロかイチか」ではない。小さく始めて、軌道に乗ってから本格化するという戦略的なアプローチが、リスクを抑えながら可能性を広げる。
学び直しは、未来の可能性を広げる選択肢だ。大学院進学、社会人MBA、リスキリングなど、「再学習」によって新たなスキルや知識を獲得できる。
ただし、時間・コスト・機会損失が伴う。学び直しは「投資」であり、何を得てどう活かすのかを明確にすることが大切だ。
文部科学省は「マナパス」というポータルサイトを通じて、社会人の学び直しに役立つ講座や支援制度の情報を発信している。また、厚生労働省の「教育訓練給付金」では、専門実践教育訓練の受講者に対して教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が支給される。
学び直しの効果は、すぐには見えない。
社会人MBAを取得しても、すぐに年収が上がるわけではない。むしろ、学費や時間を考えると、短期的には「損」をする可能性が高い。
だが、長期的に見れば、学び直しによって得られるものは大きい。
重要なのは、「学び直し」を目的にしないことだ。「MBAを取得する」こと自体が目的になると、学んだ内容を活かせず、コストばかりがかかる。
学び直しは手段であって、目的ではない。「この学びをどう活かすか」を明確にした上で投資することが、学び直しの成否を分ける。
転職、起業、学び直し。どの道を選んでも、完全な正解は存在しない。
だが、それでいい。
大切なのは、「その時の自分が納得できるかどうか」だ。
マイナビの調査では、転職後の平均年収は転職前より22.0万円増加しているが、年収が上がらなかった6割の人も、必ずしも後悔しているわけではない。なぜなら、年収以外の価値(働きやすさ、やりがい、人間関係など)を重視して転職した人もいるからだ。
中小企業白書が示すように、起業した経営者の多くが「仕事のやりがい・達成感」に満足している。つまり、納得感があれば、厳しい道でも前に進めるのだ。
キャリアは一本道ではない。分岐点は何度も訪れ、その都度選択を迫られる。
だからこそ、「正解探し」ではなく「納得探し」という姿勢が重要だ。
その積み重ねがキャリアを形作り、未来の選択肢を広げていく。
正解がないからこそ、自由だ。 正解がないからこそ、納得を選べる。
この考え方を持てるかどうかが、これからのキャリアを左右する。
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