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【コース2-6】転職・起業・学び直しのリアル ― キャリアに正解はない|ステップ学習『はたらくを考える』

どの道を選んでも完全な正解は存在しない。大切なのは、自分が納得できるかどうかだ。「正解探し」ではなく「納得探し」をしよう。

2026/01/07
【コース2の記事一覧は▶をクリック】
コース2仕事ってなんだ?「はたらく」をリアルに考える
2-1学生と社会人のリアルな違い ― 「叱られる価値」とアルバイトでは学べないこと
2-2大企業・スタートアップ・公務員 ― 働き方のリアル比較
2-3技術者からマネジメントへ ― キャリアの分かれ道を考える
2-4働き方と職場文化のリアル ― 自分の未来をどう選ぶ?
2-5正解はない ― キャリアにおける「納得探し」の考え方
2-6転職・起業・学び直しのリアル ― キャリアに正解はない
2-7人生150年時代を生き抜く ― AIとエンタメが変えるキャリアの新常識

「キャリアの正解」を探す呪縛

「この会社に入れば安心だ」 「この道を選べば間違いない」 

就活の時点で、多くの学生がこう考える。だが、それは幻想だ。

マイナビの調査によれば、2024年における正社員の転職率は7.2%[¹]。つまり、約14人に1人が転職している計算だ。特に20代男性では13.4%、20代女性では11.3%と、若い世代ほど転職率が高い。

さらに興味深いのは、40-50代の転職率が増加傾向にあることだ。40代女性は前年比+0.9ポイント、50代女性は+0.5ポイント、40代男性も+0.3ポイント上昇している[¹]。つまり、キャリアの分岐点は新卒時だけではなく、社会人になってからも何度も訪れるのだ。

「一度入社したら定年まで」という昭和的なキャリア観は、もはや現実と乖離している。キャリアには唯一の正解など存在しない。転職・起業・学び直しは、それぞれにリスクと可能性を持つ選択肢であり、どの道を選んでも「自分が納得できる選択を積み重ねる」ことこそがキャリアを形作るのだ。

 

転職という選択肢

転職は「逃げ」なのか、「挑戦」なのか

転職は、自分の成長環境を変えるための最も現実的な手段だ。新しい挑戦やスキルを得られる可能性がある一方、安定した基盤を失うリスクも存在する。

マイナビの調査では、2024年に転職した人の転職理由トップは「給与が低かった」(25.5%)だった[¹]。転職先の決定理由でも「給与が良い」(25.9%)が最多で、給与への不満が転職の大きな動機となっていることがわかる。

では、転職によって実際に給与は上がるのか?

同調査によれば、転職後の平均年収は509.3万円で、転職前の487.3万円よりも22.0万円高い[¹]。転職後に年収が上がった割合は39.4%で、特に30代男性(49.5%)、40代男性(47.9%)で割合が高い。転職による年収増加額が最も大きかったのは40代男性の34.4万円だった。

つまり、約4割の人は転職で年収を上げている一方で、約6割は年収が変わらないか下がっている可能性がある。

転職後の「不都合な真実」

ただし、転職すればすべてが解決するわけではない。

前回の記事で紹介したように、転職者の約4人に1人(26%)が転職を後悔しており[²]、転職者の7割以上が転職後にマイナスギャップを実感している[³]。転職に失敗したと感じる理由として「職場の雰囲気が悪い」(17.8%)、「人間関係が悪い」(12.6%)など、職場環境が悪い理由が上位を占めている[⁴]。

つまり、「逃げの転職」と「挑戦の転職」は結果が大きく異なる。

  • 逃げの転職:「今の環境が嫌だから」という理由だけで転職すると、転職先でも同じ問題に直面する可能性が高い
  • 挑戦の転職:「この環境で何を得たいか」が明確な転職は、たとえ年収が下がっても納得感が高い

転職は環境を変える手段であって、問題を解決する魔法ではない。自分が何を変えたいのか、何を得たいのかを明確にすることが、転職の成否を分ける

 

起業という選択肢

「自由」と「責任」の両輪

起業は、裁量とスピードを最大限手にできる選択肢だ。成功すれば大きなやりがいと成果を得られるが、失敗すれば生活や人間関係にまで影響が及ぶ。

中小企業庁の「中小企業白書2023」によれば、日本の開業率は2021年度で4.4%、廃業率は3.6%と、諸外国と比較して相当程度低水準である[⁵]。また、起業後の企業生存率は、1年後で95.3%と高いものの、5年後には81.7%まで低下する[⁶]。

欧米諸国のデータを見ると、起業後5年の生存率は50%を下回る国が多く[⁷]、起業して5年を超えて生き残ることの厳しさがうかがえる。

やりがいと現実のギャップ

興味深いのは、起業した経営者の満足度だ。

中小企業白書によれば、創業後5-9年経過した経営者に「事業に対して現在満足していること」を聞くと、「仕事のやりがい・達成感」が最も多く、次いで「仕事の業務内容」だった[⁵]。つまり、生き残った経営者の多くは、事業に対して満足感を得ている

一方、起業の準備段階で生じた課題としては、「事業に必要な専門知識、経営に関する知識・ノウハウが不足していた」が最多で、次いで「資金調達方法の目処がつかなかった」が挙がっている[⁵]。

起業のリアルは、「自由」と「責任」がセットであるということだ。すべての裁量を手にする代わりに、すべての責任を自ら負う必要がある。売上が立たなければ給料はゼロ、資金繰りに失敗すれば会社は潰れる。

だが、その厳しさを乗り越えた先に、サラリーマン時代には味わえなかったやりがいがある。起業は「逃げ道」ではなく、覚悟を持って挑む道だ。

「小さく始める」という選択肢

いきなり起業するのはリスクが高い。ならば、副業やパラレルキャリアから始めるという選択肢がある。

エン・ジャパンの調査によれば、ミドル世代(35歳以上)の23%がパラレルキャリア/副業に取り組んでおり、特に30代では33%に達する[⁸]。パラレルキャリア/副業を始めた理由のトップは「複数の収入源を持ち、経済的に安定するため」(50%)、次いで「本業では得られない経験やスキルを積むため」(46%)だった[⁸]。

副業によって得られた年収は、100万円以上が約2割に上る[⁸]。つまり、本業を続けながら、起業の準備や小規模なビジネスを試すことができるのだ。

起業は「ゼロかイチか」ではない。小さく始めて、軌道に乗ってから本格化するという戦略的なアプローチが、リスクを抑えながら可能性を広げる。

 

学び直しという選択肢

「投資」としての学び直し

学び直しは、未来の可能性を広げる選択肢だ。大学院進学、社会人MBA、リスキリングなど、「再学習」によって新たなスキルや知識を獲得できる。

ただし、時間・コスト・機会損失が伴う。学び直しは「投資」であり、何を得てどう活かすのかを明確にすることが大切だ。

文部科学省は「マナパス」というポータルサイトを通じて、社会人の学び直しに役立つ講座や支援制度の情報を発信している[⁹]。また、厚生労働省の「教育訓練給付金」では、専門実践教育訓練の受講者に対して教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が支給される[¹⁰]。

学び直しの「コスパ」を考える

学び直しの効果は、すぐには見えない。

社会人MBAを取得しても、すぐに年収が上がるわけではない。むしろ、学費や時間を考えると、短期的には「損」をする可能性が高い

だが、長期的に見れば、学び直しによって得られるものは大きい。

  • 新しいキャリアの選択肢が広がる
  • 専門性が高まり、市場価値が上がる
  • 異業種の人脈が形成される
  • 自分の強みや弱みを客観視できる

重要なのは、「学び直し」を目的にしないことだ。「MBAを取得する」こと自体が目的になると、学んだ内容を活かせず、コストばかりがかかる。

学び直しは手段であって、目的ではない。「この学びをどう活かすか」を明確にした上で投資することが、学び直しの成否を分ける。

 

結び ― 「正解探し」より「納得探し」

転職、起業、学び直し。どの道を選んでも、完全な正解は存在しない。

  • 転職しても、約4人に1人は後悔する[²]
  • 起業しても、5年後に生き残るのは8割程度[⁶]
  • 学び直しても、すぐに成果が出るとは限らない

だが、それでいい。

大切なのは、「その時の自分が納得できるかどうか」だ。

マイナビの調査では、転職後の平均年収は転職前より22.0万円増加している[¹]が、年収が上がらなかった6割の人も、必ずしも後悔しているわけではない。なぜなら、年収以外の価値(働きやすさ、やりがい、人間関係など)を重視して転職した人もいるからだ。

中小企業白書が示すように、起業した経営者の多くが「仕事のやりがい・達成感」に満足している[⁵]。つまり、納得感があれば、厳しい道でも前に進めるのだ。

キャリアは一本道ではない。分岐点は何度も訪れ、その都度選択を迫られる。

だからこそ、「正解探し」ではなく「納得探し」という姿勢が重要だ。

  • 「この選択は正しいのか?」ではなく、「この選択に納得できるか?」
  • 「失敗したらどうしよう」ではなく、「失敗しても次がある」
  • 「一度決めたら変えられない」ではなく、「軌道修正していい」

その積み重ねがキャリアを形作り、未来の選択肢を広げていく。

正解がないからこそ、自由だ。 正解がないからこそ、納得を選べる。

この考え方を持てるかどうかが、これからのキャリアを左右する。

 

参考文献

 

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