【コース4-4-1】理系キャリアの新常識 ― 「安定か挑戦か」ではなく、「変化にどう向き合うか」|ステップ学習『自分を知ろう』
「安定」か「挑戦」か―その二択に意味はあるのか?データと現実から“本当に後悔しないキャリア選択”を考える。
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君たちは今、人生の重要な分岐点に立っている。
就職活動を控えて、あるいは真っ最中で、「どんな企業を選ぶべきか」「何を基準に決めればいいのか」と悩んでいる人も多いだろう。
だが、ここで一つ問いたい。
その判断基準は、本当に自分の考えから導き出したものだろうか?
この記事では、君たちのキャリアを左右する「価値観」について、現実とデータをもとに考えていく。
きれいごとは抜きに、リアルで行こう。
安定志向の罠と挑戦志向のリアル
💡 現実:安定志向が近年で最高水準
マイナビ「2024年卒調査結果」[※1]によると、企業選択のポイントとして「安定している」を挙げた学生は48.8%。
5年連続で最多、かつ前年比4.9ポイント増と、安定志向は年々強まっている[※2]。
💭 「安定」という名の幻想
君たちが考える「安定した会社」とは何だろう?
大手企業、有名企業、歴史ある会社――確かに魅力的に見える。
しかし、現実はそう単純ではない。
【事例1:Aさん(電気電子工学専攻)】
「絶対安定」と言われた大手メーカーに入社。
だが、入社3年目に事業再編による早期退職勧奨を経験。
安定を求めて入ったはずの会社が、実は変化に対応できず停滞していた。
いまや、有名企業でも新規事業を生み出せず、構造改革の名のもとにリストラを繰り返す例が少なくない。
「安定」とは、変化を止めた結果の停滞であり、世の中に適応していくことができない不安定の温床であることもある。🌶️🌶️🌶️
🎯 挑戦志向にも落とし穴がある
一方で、「挑戦できる環境」を求めてベンチャーやスタートアップを志す学生もいる。
だが、それもまた現実的な見極めが必要だ。
【事例2:Bさん(情報工学専攻)】
「挑戦したい」とスタートアップに入社したが、組織基盤が未成熟でノウハウもなく、日々の業務が行き当たりばったり。
気づけば「挑戦」ではなく「混乱」の中で消耗していた。
📋 真の安定・真の挑戦とは
真の安定とは、変化する社会に適応し、価値を提供し続ける力を持つこと。
真の挑戦とは、ただ新しい環境に飛び込むことではなく、社会と真剣に向き合い、自分と組織を鍛えながら成果を出し続けることだ。
大企業でも市場の声を聞き、品質向上や社会貢献を重ねて成長している会社がある。
一方で、スタートアップでも堅実な経営と明確な戦略を持つ企業が増えている。
大切なのは「安定か挑戦か」ではなく、「どう変化に対応できるか」だ。

親の意見とブランド志向という見えない鎖
📜 親の価値観は「昭和仕様」かもしれない
【事例3:Cさん(機械工学専攻)】
親の勧めで「安定している」老舗大手に入社。
しかし配属は定型業務ばかりで、スキルを磨く機会も少ない。
「親の言う通りにしておけば安心」と思っていたが、変化に対応できないキャリアに不安を感じ、転職を決意した。
親世代の価値観は、終身雇用と年功序列が前提だった。
しかし現代は、企業寿命が短く、個人のスキルが武器となる時代。
親の「知恵」は参考になるが、「常識」をそのまま信じるのは危険だ。
🎯 ブランド志向の落とし穴
【事例4:Dさん(化学工学専攻)】
誰もが知る有名化学メーカーに入社したが、意思決定が遅く、若手が意見を言う場もない。
「有名企業にいる」という肩書きはあるが、仕事のやりがいを感じられなかった。
ブランドという「看板」で仕事をしているのか、それとも自分の力で価値を生み出しているのか――。
その違いが、数年後の成長を決定的に分ける。
もちろん、品質を守り抜く企業の姿勢には大きな価値がある。
だが、重要なのはその環境で自分がどう学び、どう成長できるかだ。
看板は君たちを守らない。
未来を作るのは、君たち自身の価値観と行動だけだ。
年収重視の落とし穴と機会損失
📊 データが示す傾向
マイナビ「2024年卒調査結果」[※1]によると、企業選択のポイントとして「給料が良い」を挙げた学生は21.4%(前年比2.3pt増)で、2年連続の増加傾向にある。待遇面への関心は年々高まっている。
年収を重視すること自体は悪いことではない。
しかし、初任給や平均年収といった“目先の数字”だけで判断するのは危険だ。
🎯 年収の罠:短期的な報酬に潜むリスク
【事例5:Eさん(情報工学専攻)】
初任給の高さに惹かれ、金融系IT企業に入社。
確かに給与水準は高かったが、業務は長時間労働が常態化し、技術スキルを磨く余裕がなかった。
3年後、Web系ベンチャーに入社した同期の方が、技術力もマネジメント経験も上で、結果的に転職市場での評価も高くなっていた。
このように、短期的な年収にとらわれて成長機会を逃すケースは多い。
特に理系人材の場合、若い時期に技術力と経験を積む方が、長期的には生涯年収を押し上げる可能性が高い。
20代前半では、“収入の最大化”よりも“市場価値の最大化”を意識した方が良い。
成長できる環境への自己投資こそ、最もリターンの高い戦略なのだ。
⏳ 挑戦を逃した代償:未来のチャンスを失うことも
【事例6:Fさん(物理学専攻)】
AI系スタートアップと大手メーカーの内定を比較し、安定と初年度年収を重視して大手を選択。
しかし5年後、AI業界は急成長し、当時のスタートアップは上場。
その企業に入社した研究室の後輩は、今や技術責任者になっていた。
Fさんは「当時の選択を悔やんでいる」と語る。
これは極端な例かもしれないが、“無難な選択”の裏には、しばしば大きな機会損失が隠れている。
短期的な安心感を優先した結果、長期的な成長の場を逃すことは珍しくない。
理系のキャリアでは、目の前の“安定収入”よりも、将来の“成長曲線”を冷静に見極めることが重要だ。

次節では、変化にどう向き合うか、具体的な対応策を紹介しよう。
参考文献
- ※1:株式会社マイナビ「2024年卒大学生活動実態調査」2023年7月28日公開。
- ※2:株式会社マイナビ「2024年卒学生就職モニター調査 7月の活動状況」2023年7月28日公開。
