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【コース1-12】きみの価値観は、本当にきみ自身のものか?|ステップ学習『幸せを考える』

今の君の考えは本当に自分の判断か?認知バイアスと就職データから、価値観を自力で設計する思考法を解説。

2026/01/05
【コース1の記事一覧は▶をクリック】
コース1幸せとは?学校では教えてくれない「幸せ」について考える
1-0キャリアを考える前に ― 問いから始めよう
1-1幸せになるためにキャリアを考えるということは正しいのか?
1-2小さな幸せを積み重ねる、それがキャリアになる
1-3欲望という名の燃料
1-4心の進化プログラム
1-5幸せの方程式を解き明かす― 4つの因子がキャリアを加速させる ―
1-6理系という特殊解
1-7幸せになる理屈とキャリア戦略
1-8本音で語る ― 理系学生のための偶発性キャリア戦略
1-9幸福OSを設計せよ — 4因子×キャリアの多目的最適化
1-10「可愛い子には旅をさせよ」の科学的真実
1-11世の中は平等か?努力と成果のギャップの現実
1-12きみの価値観は、本当にきみ自身のものか?
1-13幸せと収入を両立する理系キャリア設計術
1-14働くことと幸せ
1-15「幸せは収入だけじゃ測れない」— データで解く、お金と幸福の最適解
1-16「なんとかなる」で実際になんとかなる作戦
1-17「理系の特権を武器に」― お金を育てる4つの戦略と実践ステップ

はじめに

理工系学生の多くが無自覚に信じている「大企業志向」「安定神話」。

それは本当に、自分で導き出した価値観だろうか?

心理学者ダニエル・カーネマンの認知理論と、最新の就職データをもとに、

「価値観形成の罠」と「自立した思考」への道筋を探る。

 

問いを問う、哲学的前置き

まず問おう。「自分自身」とは何か?

哲学的には、人は社会的関係の中で形成される存在であり、

絶対的で不変の「自分」など存在しないとされる。

時代・文化・環境によって、私たちは常に変化していく。

ここでの焦点は、「主体としての自分」だ。

日々の選択を行い、責任を負う存在としての「自分」が、

本当に自分の意志で価値観を形成しているのか?

それとも、他者の思考を“自分の考え”だと思い込んでいるのか?

 

1. 君たちの脳は騙されている ― システム1の罠

「自分で考えているつもり」で、

実は思考を停止しているケースは驚くほど多い。

【データで見る現実】

マイナビ2026年卒調査によると、

理工系学生の大手企業志向率は51.8%。

半数以上が「大手企業がよい」と答えている。

【カーネマンの理論】

ノーベル経済学賞を受賞した

ダニエル・カーネマン(『ファスト&スロー』)は、

人の判断には2つのシステムがあると述べた。

  • システム1:直感的・自動的・感情的
  • システム2:論理的・意識的・分析的

問題は、多くの価値判断がシステム1によって下されることだ。

つまり、「深く考えずに」「なんとなく」選んでしまっている。

「大企業が安定」「理系は就職に有利」

——それは本当に、自分で検証した結論か?

 

2. 価値観を支配する4つの影響要因

理工系学生の価値観形成には、次の4つの要因が大きく影響する。

2-1. 家族の価値観(特に親の職業・考え方)

岐阜大学の研究によると、

青年の価値観は「実際の親の考え」よりも、「子どもが想像する親の考え」に強く影響される。

親が何を言ったかではなく、子が“親はこう考えているだろう”と思い込むことが決定的。

理工系の親を持つ学生ほど、「技術系なら大手企業で安定」という固定観念を持ちやすい。

だが、それは現代の市場構造に本当に合っているのか?

2-2. 学校教育システム(偏差値重視・減点主義)

日本の教育は「正解を早く見つける力」を育てる。

しかしキャリア設計に「正解」は存在しない。

偏差値→大手企業という“エスカレーター思考”は、

変化の激しい時代ではリスクにもなり得る。

2-3. メディア(テレビ・SNS・YouTube)

メディアは「わかりやすいストーリー」を好む。

「大手=安定」「AIで仕事がなくなる」など、複雑な現実を単純化したメッセージが

無意識のうちに価値観を方向づけてしまう。

2-4. 同調圧力(みんなと同じが安心)

マイナビ調査によると、理工系学生の51.8%が「大手企業志向」と回答。

背景には「多数派に従うことで安心を得る」

バンドワゴン効果がある。

「みんなが大手を目指している」

「理系なら当然大手」

——そうした空気が、個人の判断を支配している。

さらに、同じ調査では以下の結果も示されている。

  • 「共働き志向」:72.1%
  • 「転勤が多い会社は避けたい」:31.0%

この2つの価値観は、構造的に両立しづらい。

「大手企業志向」と「地域安定志向」が

同時に存在している点に、無意識の矛盾が見える。

(※大手企業でも地域限定職制度がある場合は例外)

 

3. 理工系学生の3大思い込みと現実

理工系学生が陥りやすい代表的な「思い込み」と、

実際のデータが示す現実を比べてみよう。

🚫 思い込み①:「大企業が安定」

大企業なら将来安泰。終身雇用で安心。

✅ 現実

大企業の倒産リスクは、業界や景気によって大きく変化する。

経済産業省や中小企業庁の統計によると、企業の平均寿命は約30年前後。

規模の大きさや知名度が、必ずしも長期的な安定を保証するわけではない。

むしろ、組織が大きいほど意思決定が遅れ、

急速な市場変化に対応しにくいリスクもある。

本当の「安定」とは、変化に柔軟に対応できる力のことだ。

🚫 思い込み②:「理系は文系より就職に有利」

技術職だから就職は楽勝。専門性があるから安心。

✅ 現実

厚生労働省・文部科学省「令和6年度大学等卒業者の就職状況調査」(2025年4月発表)によると、

  • 理系就職率:97.3%(前年比▲1.5pt)
  • 文系就職率:98.2%(前年比+0.3pt)

就職率はわずかに文系が上回っている。

つまり「理系=有利」という単純な構図はすでに崩れており、

専門性と市場ニーズの一致こそが就職成功の鍵だ。

🚫 思い込み③:「AIに仕事を奪われる」

技術の進歩で技術職は不要になる。AIが全てを代替する。

✅ 現実(より複雑な真実)

現在の日本では、ITエンジニアの有効求人倍率は約3.5倍(厚生労働省「職業安定業務統計」2023年)と高水準。

少なくとも現時点では、「AIが技術職を奪っている」とは言い難い。

ただし、米国などではAI技術の急速な進展により、

ジュニアレベルの新卒エンジニア採用が減少傾向にある(TechCrunch, 2024)。

この変化は日本でも数年後に波及する可能性がある。

重要なのは、「奪われるか/奪われないか」という二択ではなく、

どの職種がどのスパンで影響を受けるかを具体的に分析し、

その変化に対応できるスキルを磨くことだ。

 

4. 価値観のアップデート:実践的な3つの方法

では、どうすれば「本当に自分の価値観」を築けるのか?

ここでは、理工系学生におすすめの3つの実践方法を紹介する。

方法①:情報源の多様化

  • 業界の多様化:IT、製造、バイオ、エネルギーなど異分野の人と話す。
  • 年代の多様化:20代から60代まで、異なるキャリア段階の人の話を聞く。
  • 国際的視点:海外の理工系キャリアや働き方を調べる。

💡実践例

月に1回、「まったく知らない業界」の人とコーヒーを飲む。

バーでの偶然の会話から、新しい視点を得られることも多い。

方法②:データに基づく検証

  • 一次データの活用:厚労省・文科省などの公式統計を直接確認。
  • 企業分析:財務諸表、成長率、離職率など定量データで判断。
  • 感情論の排除:「なんとなく」「みんなが言ってるから」を基準にしない。

💡実践例

興味のある企業5社の過去5年間の売上・利益推移を調べる。

数字で見ると、評判や印象とのギャップに気づける。

方法③:定期的な見直し

  • 半年ごとの価値観チェック:判断基準の変化を確認する。
  • 前提条件の再検証:「なぜそう思うのか?」を3回繰り返す。
  • 失敗の活用:判断ミスから学び、基準をアップデートする。

💡実践例

「価値観日記」をつけ、重要な判断の理由を記録する。

半年後に見返すと、自分の成長や変化が見えてくる。

重要な真実

自分の人生は、自分で決めるしかない。

自分を幸せにできるのは、自分しかいない。

自分で自分を信じられなければ、

他人も君たちを信じることはできない。

刷り込みではなく、データと経験で選択する力を鍛えよう。

それが「自分を信じる力」につながる。

 

5. 結論:君たちの人生は君たちが決めろ

「理系だから大手企業へ」

「親が望むから」

「みんながそうしているから」

──それは他人の価値観だ。

君たち自身の価値観ではない。

価値観も技術と同じく、定期的なアップデートが必要だ。

現代は変化が激しい時代。昨日の常識が今日の非常識になる。

だからこそ、生き残るのは「正しい答えを持つ人」ではなく、

正しい問いを立てられる人だ。

君たちの人生の舵を取るのは、君たち自身。他人任せにするな。

データを見よう。多様な視点を取り入れよう。

そして、自分の価値観を定期的に見直そう。

それができたとき、君たちは初めて「本当の自分の価値観」を手に入れる。

 

参考文献

  • 片桐恵子・伊藤宗親 (2018). 「青年期の価値観形成に及ぼす気質と親の価値観の影響」日本心理学会第82回大会
  • 森下正康 (1979). 「子どもの親に対する親和性と親子間の価値観および性格の類似性」『心理学研究』第50巻第3号, 145–152
  • ダニエル・カーネマン (2011). 『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』早川書房
  • 厚生労働省・文部科学省 (2025). 「令和6年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)」
  • 厚生労働省 (2023). 「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
  • 中小企業庁 (2025). 「中小企業白書・小規模企業白書」
  • 株式会社マイナビ (2025). 「マイナビ2026年卒大学生就職意識調査」
  • TechCrunch / Indeed Hiring Lab (2024). 「AI and Junior Software Job Market Analysis」

 

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