今の君の考えは本当に自分の判断か?認知バイアスと就職データから、価値観を自力で設計する思考法を解説。
理工系学生の多くが無自覚に信じている「大企業志向」「安定神話」。
それは本当に、自分で導き出した価値観だろうか?
心理学者ダニエル・カーネマンの認知理論と、最新の就職データをもとに、
「価値観形成の罠」と「自立した思考」への道筋を探る。

まず問おう。「自分自身」とは何か?
哲学的には、人は社会的関係の中で形成される存在であり、
絶対的で不変の「自分」など存在しないとされる。
時代・文化・環境によって、私たちは常に変化していく。
ここでの焦点は、「主体としての自分」だ。
日々の選択を行い、責任を負う存在としての「自分」が、
本当に自分の意志で価値観を形成しているのか?
それとも、他者の思考を“自分の考え”だと思い込んでいるのか?

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「自分で考えているつもり」で、
実は思考を停止しているケースは驚くほど多い。
マイナビ2026年卒調査によると、
理工系学生の大手企業志向率は51.8%。
半数以上が「大手企業がよい」と答えている。
ノーベル経済学賞を受賞した
ダニエル・カーネマン(『ファスト&スロー』)は、
人の判断には2つのシステムがあると述べた。
問題は、多くの価値判断がシステム1によって下されることだ。
つまり、「深く考えずに」「なんとなく」選んでしまっている。
「大企業が安定」「理系は就職に有利」
——それは本当に、自分で検証した結論か?

理工系学生の価値観形成には、次の4つの要因が大きく影響する。
岐阜大学の研究によると、
青年の価値観は「実際の親の考え」よりも、「子どもが想像する親の考え」に強く影響される。
親が何を言ったかではなく、子が“親はこう考えているだろう”と思い込むことが決定的。
理工系の親を持つ学生ほど、「技術系なら大手企業で安定」という固定観念を持ちやすい。
だが、それは現代の市場構造に本当に合っているのか?
日本の教育は「正解を早く見つける力」を育てる。
しかしキャリア設計に「正解」は存在しない。
偏差値→大手企業という“エスカレーター思考”は、
変化の激しい時代ではリスクにもなり得る。
メディアは「わかりやすいストーリー」を好む。
「大手=安定」「AIで仕事がなくなる」など、複雑な現実を単純化したメッセージが
無意識のうちに価値観を方向づけてしまう。
マイナビ調査によると、理工系学生の51.8%が「大手企業志向」と回答。
背景には「多数派に従うことで安心を得る」
バンドワゴン効果がある。
「みんなが大手を目指している」
「理系なら当然大手」
——そうした空気が、個人の判断を支配している。
さらに、同じ調査では以下の結果も示されている。
この2つの価値観は、構造的に両立しづらい。
「大手企業志向」と「地域安定志向」が
同時に存在している点に、無意識の矛盾が見える。
(※大手企業でも地域限定職制度がある場合は例外)

理工系学生が陥りやすい代表的な「思い込み」と、
実際のデータが示す現実を比べてみよう。
大企業なら将来安泰。終身雇用で安心。
大企業の倒産リスクは、業界や景気によって大きく変化する。
経済産業省や中小企業庁の統計によると、企業の平均寿命は約30年前後。
規模の大きさや知名度が、必ずしも長期的な安定を保証するわけではない。
むしろ、組織が大きいほど意思決定が遅れ、
急速な市場変化に対応しにくいリスクもある。
本当の「安定」とは、変化に柔軟に対応できる力のことだ。
技術職だから就職は楽勝。専門性があるから安心。
厚生労働省・文部科学省「令和6年度大学等卒業者の就職状況調査」(2025年4月発表)によると、
就職率はわずかに文系が上回っている。
つまり「理系=有利」という単純な構図はすでに崩れており、
専門性と市場ニーズの一致こそが就職成功の鍵だ。
技術の進歩で技術職は不要になる。AIが全てを代替する。
現在の日本では、ITエンジニアの有効求人倍率は約3.5倍(厚生労働省「職業安定業務統計」2023年)と高水準。
少なくとも現時点では、「AIが技術職を奪っている」とは言い難い。
ただし、米国などではAI技術の急速な進展により、
ジュニアレベルの新卒エンジニア採用が減少傾向にある(TechCrunch, 2024)。
この変化は日本でも数年後に波及する可能性がある。
重要なのは、「奪われるか/奪われないか」という二択ではなく、
どの職種がどのスパンで影響を受けるかを具体的に分析し、
その変化に対応できるスキルを磨くことだ。

では、どうすれば「本当に自分の価値観」を築けるのか?
ここでは、理工系学生におすすめの3つの実践方法を紹介する。
💡実践例
月に1回、「まったく知らない業界」の人とコーヒーを飲む。
バーでの偶然の会話から、新しい視点を得られることも多い。
💡実践例
興味のある企業5社の過去5年間の売上・利益推移を調べる。
数字で見ると、評判や印象とのギャップに気づける。
💡実践例
「価値観日記」をつけ、重要な判断の理由を記録する。
半年後に見返すと、自分の成長や変化が見えてくる。
重要な真実
自分の人生は、自分で決めるしかない。
自分を幸せにできるのは、自分しかいない。
自分で自分を信じられなければ、
他人も君たちを信じることはできない。
刷り込みではなく、データと経験で選択する力を鍛えよう。
それが「自分を信じる力」につながる。

「理系だから大手企業へ」
「親が望むから」
「みんながそうしているから」
──それは他人の価値観だ。
君たち自身の価値観ではない。
価値観も技術と同じく、定期的なアップデートが必要だ。
現代は変化が激しい時代。昨日の常識が今日の非常識になる。
だからこそ、生き残るのは「正しい答えを持つ人」ではなく、
正しい問いを立てられる人だ。
君たちの人生の舵を取るのは、君たち自身。他人任せにするな。
データを見よう。多様な視点を取り入れよう。
そして、自分の価値観を定期的に見直そう。
それができたとき、君たちは初めて「本当の自分の価値観」を手に入れる。

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