【コース1-2】小さな幸せを積み重ねる、それがキャリアになる|ステップ学習『幸せを考える』
幸せは将来の目標ではなく「いまの状態」。幸福学と理系的視点で、日常のご機嫌がキャリアになる理由を解説。
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「幸せの青い鳥」の寓話※にあるように、幸せはどこか遠くにあって追い求めるものではなく、すでに「今ここ」に、足元に存在しているととらえよう――ということ。
たとえば、難しい問題を解けた、美しい数式で物事をシンプルに表現できた、実験がうまくいった。
あるいは「今日のカレーがおいしかった~、感謝!」といった瞬間もそう。
そうした目の前の小さな幸せとその実感を積み重ねることが、「幸せである(Being)」ということにつながる。
この気分の良い、ご機嫌な状態を積み重ねていくことこそが、キャリア構築につながる――というだけの話。
「本当にそうなの?」と、まだしっくりこない人もいるかもしれない。もう少し説明しよう。

前野隆司教授の研究
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授。
日本の幸福学 研究の第一人者であり、元キヤノンのロボット研究者から転身し、「幸福」を科学的に研究している方だ。
前野教授は、1500人を対象とした統計解析により、幸せになるための4つの因子を科学的に導き出したんだ。
(詳細は著書『幸せのメカニズム』を参照)

幸せになるための4つの因子
- 「やってみよう!」因子:自己実現と成長の因子
- 「ありがとう!」因子:つながりと感謝の因子
- 「なんとかなる!」因子:前向きと楽観の因子
- 「あなたらしく!」因子:独立とマイペースの因子
これらを日常で実践していると、ご機嫌な状態を維持でき、
「幸せな状態(Being)」を継続できることが明らかになった。
これは、まさに「幸せな人生の仕組み」を科学的に整理した発見といえる。
幸せの因子とキャリア構築
つまり、キャリア構築の目標である
「幸せ=ご機嫌状態の継続」
は、この4つの因子を実践することで達成できるということ。
さらに言えば、「いま・ここ」で幸せを生み出し、感じていく心のあり方と行動が、キャリア構築そのもの。
4つの因子に照らし合わせると、
- 前向きに、楽観的に、「なんとかなる」と考えてやってみる。
- 自分らしさを大切にしながら、物事に取り組む。
- 人を喜ばせ、感謝と愛情を持って接する。
- 他者や社会に親切にする。
――こうした「つながりと感謝」の実践こそが、幸せであり、キャリア構築の本質だ。
これなら、時代がどんなに変わっても続けられる。
AI時代になっても、このマインドで過ごし、行動していけばいい。分かりやすいよね。
「働く」という言葉の語源
ちなみに、「働く」という言葉の語源が「傍(はた)を楽(らく)にする」だという話を聞いたことはあるかな?
前向きに、楽観的に、「なんとかなる」と考えてやってみる。
自分らしさを大切にしながら傍を楽にし、人を喜ばせ、親切にする。
愛情を持ち、社会の一員であることに感謝する。
こうして見ると、「幸せの4つの因子」と「働く(=キャリア構築)」がしっかりつながっていることが分かる。
ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)との関係
さらに言うと、これは「ガクチカ(学生時代に力を入れたエピソード)」そのものでもある。
前向きに、楽観的に、「なんとかなる」と考えてやってみる。
自分らしさを大切にしながら物事に取り組む。
――この「幸せの要素」を実践すること自体がキャリア構築であり、
同時にガクチカとしてアピールできる内容にもなる。
ガクチカとは、その人の性質や物事の見方、考え方、小さな成功体験を企業が知るための質問だけど、
本来的には「この応募者は幸せの因子を自発的に展開できているか?」「その実践を通じてキャリアを築けているか?」を見ているとも言える。
だからこそ、日々の学生生活の中で、
- 「前向きに楽観的に、なんとかなると考えてやってみよう!」
- 「人に親切にし、感謝する」
――という姿勢で行動することが大切。
それが幸せであり、キャリア構築でもあり、
結果として就職活動も自然に乗り越えられるようになる。
幸福がつながり、続いていく――それこそがキャリア形成の真の魅力であり、最も強固なキャリアの形だ。

幸せとは「状態(Being)」だ。このことを示す5人の権威を紹介しよう。
1. フランクル:幸せは目標ではなく、結果にすぎない
ヴィクトール・E・フランクル(1905–1997)
オーストリアの精神科医・心理学者。
ナチスの強制収容所を生き延び、その極限体験から「ロゴセラピー(意味による治療)」を創始した人物。
フロイト、ユング、アドラーに次ぐ「第4の巨頭」とも呼ばれ、代表作は『夜と霧』。
フランクルは収容所で原稿を失いながらも、記憶を頼りに書き直し、使命感によって苦難を乗り越えました。
その経験を踏まえ、彼は幸福について次のように語っている。
「しあわせは目標ではなく、結果にすぎない」
「幸福の追求は幸福を妨げます」
👉 幸福になる本当のコツは、「意思をもって今を生きる」こと。
幸福とは結果として生じるものであり、追い求める対象ではなく「状態(Being)」そのもの。
📋(補足:ロゴセラピーとは、人生の意味を見出すことで苦悩を乗り越える心理療法の一派)
2. 谷川俊太郎:「いま・ここ」にある幸せ
谷川俊太郎(1931–2024)
日本を代表する詩人。21歳で詩集『二十億光年の孤独』によりデビュー。
谷川俊太郎の幸福観は、日常の小さな瞬間に価値を見出すことの大切さを教えてくれる。
「幸せはささやかでいい、ささやかがいい。不幸はいつだってささやかじゃすまないんだから」
「幸せが自分の外にあるように思うのはアホ。外にあるのは幸せではなく不幸だけ」
「過去が気にならない、未来も気にならないで、『いま・ここ』に在る。これが僕の考える幸せの基本形です。」
👉 「将来への不安」や「過去の後悔」から心を解放し、
今取り組んでいる研究や技術、その瞬間そのものに幸せがあることを気づかせてくれる。
代表作:詩集『二十億光年の孤独』ほか。

3. 前野隆司:幸せの4因子
前野隆司(1962–)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。
「幸せになるための4つの因子」の詳細は上述した通り。
「Doing(行為)ではなくBeing(存在)で認めてくれる言葉――
『あなたがいてくれてよかった』が最強の褒め言葉です。」
👉 幸せは4つの因子を意識することで高められる。
著書:『幸せのメカニズム』『幸せの日本論』ほか。

4. アラン:幸福は意志の力で生まれる
アラン(本名:エミール=オーギュスト・シャルティエ, 1868–1951)
フランスの哲学者・教育者。
高校教師を務めながら新聞に4000篇以上の随筆(プロポ)を発表した。
その中から「幸福」について書かれた93篇をまとめた名著が『幸福論』。
「人は幸福だから笑うのではない。笑うから幸福になるのだ」
(『幸福論』より)
この逆説的な言葉には、アランの幸福観の核心がある。
👉 感情に流されず、「自分の態度で感情をつくる」という考え方。
朝、憂鬱に感じても、その感情に従うのではなく――
顔を洗い、服を整え、人に挨拶し、笑ってみる。
そうすることで心は自然と整い、幸福な状態(Being)が現れる。
理工系学生にとっても、困難や失敗に直面したとき、
「感情」ではなく「意志と行動」で状況を変える力を持つというヒントになる。
プログラムがエラーを出しても、実験がうまくいかなくても、
就職活動が思い通りに進まなくても――
それは一時的な「気分」にすぎない。
楽観的な意志と行動によって、幸せな状態を取り戻せる。

5. 禅・仏道思想:ただ在ることの智慧
禅・仏道思想は、神を中心にした宗教ではなく、
「物事を正しく認識して、幸せに生きるための方法論」として体系化された哲学。
道元(1200–1253)
日本曹洞宗の開祖。中国で「只管打坐(しかんたざ)」を学び、日本に伝えた。
主著は『正法眼蔵』。
「修証一等」(修行と悟りは一つである)
「只管打坐」(ただひたすら坐る)
👉 「ただプログラミングする」「ただ研究する」という純粋な態度そのものが、
幸せ(Being)につながるという考え方。
スティーブ・ジョブズも日本の禅僧に師事していたことで知られている。
禅は「目的を追う」よりも「今この瞬間に集中する」ことを重視している。

まとめに向けて
毎日ご機嫌に、自分らしさを出しながら前向きにチャレンジし、
人に感謝し、感謝される――
そんな生き方が、幸福でありキャリア構築でもあることが分かってきた。
でも、
👉 就職活動や社会人生活では、時間やお金など現実的な制約もあるよね。
その中でどう「幸せな状態」を保てばいいのだろう?
――次の章で、そのヒントを探っていこう。
次の章はこちら→【コース1-3】 欲望という名の燃料
