【コース1-14】働くことと幸せ|ステップ学習『幸せを考える』
「働く=他者貢献」を原点に、動機・幸福・キャリアを科学的に再設計。10年後を見据えた仕事の選び方を問う。
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記事概要
理工系学生が抱く「働くこと」への疑問や不安に対して、語源から現代のキャリア形成まで、本音で読み解く。
これは単なる就活ハウツーではない。
「働く意味」を一生考え続けるための、リアルで実践的な視点を示す。
綺麗事ゼロ、社会の現実を踏まえたスパイシーなメッセージだ。
🌶️ 本当にその会社で10年働き続けられる?君たちの“働く理由”は何だ?
1. 「働く」の語源が示す本質:傍を楽にする → 他者貢献
まずは原点から考えよう。
「働く」という言葉の語源を知っているだろうか?
一般に「働く」は「傍(はた)を楽(らく)にする」、つまり周囲の人を助ける・楽にするという意味から来ているとされる。
(※日本語学的には諸説あるが、近年は「他者貢献としての働く」解釈として広く紹介されている。)
📊 現実チェック
キャリタス就活2024調査によると、
入社決定時の勤務先満足度81.8% → 入社1年後には75.3%へ低下(−6.5pt)。
なぜ下がるのか?
理由は明快だ。
「自分のためだけ」に働こうとするからだ。
給料、安定、将来性──もちろん大切。
だが、それだけでは続かない。
現代語訳するとこうなる:
- 古典的解釈:傍を楽にする → 他者の困りごとを解決する
- 現代的解釈:価値を提供する → 誰かの課題を技術で解決する
「就職」は、自分の生活のためだけではない。
慶應義塾大学・前野隆司教授の「幸せの4因子」のうち、
第2因子「ありがとう!」(つながりと感謝)は、まさに「傍を楽にする」の実践と言える。
🌶️ 君たちの研究や行動は、誰かの“ありがとう”につながっているか?
2. 誰のために働くのか?:4つの受益者レイヤー
「誰のために働くのか?」
この問いが、仕事の意味を決定づける。
社会の構造を現実的に見れば、働きの目的は次の4層に分けられる。
レイヤー1:自分(Self)
- 経済的自立:生活と将来の安定
- 自己実現:やりたいことを形にする喜び
- 成長実感:昨日の自分を超える達成感
- 社会的地位:承認欲求の充足
レイヤー2:家族・恋人(Family)
- 経済基盤:家族の幸せを支える
- 時間の確保:大切な人と過ごす余白
- 将来の安心:子育て・介護・老後の備え
- 誇り:家族が誇れる仕事をする
レイヤー3:社会・コミュニティ(Society)
- 課題解決:社会の問題を技術で解く
- 文化創造:新しい価値観・働き方を提案
- 雇用創出:起業・事業拡大による貢献
- 知識還元:研究や経験を社会に活かす
レイヤー4:未来世代(Future)
- 持続可能性:環境・資源の課題対応
- 技術継承:知識と技術を次世代へ
- 文明発展:人類の進歩に寄与
- 希望創造:次世代が夢を描ける社会へ
📊 データで見る現実
国内外の調査でも、「より大きな目的」を意識して働く人ほど、仕事満足度が高いことが示されている。
🌶️ 君たちは今、どのレイヤーまで見えている?
レイヤー1(自分)だけなら、それは“仕事”ではなく“労働”かもしれない。
3. 結局、誰のために働くべきなのか?:「自分のために働く」の真意
4層を見て「結局、どれを優先すればいいんだ?」と思うかもしれない。
答えは──自分のために働こう。
「他者貢献って言ったじゃないか!」と思うだろう。
だが、ここで言う“自分のため”とは、自分を成長させることで他者にも価値を返すという意味だ。
📊 神田昌典氏『非常識な成功法則』でも、まずは自分の欲求を満たし、それを段階的に高めることが成功の基本と述べている。
これはマズローの欲求階層説とも一致する。

「自分のために働く」3段階
段階1(下位層):生理的・安全欲求
→ 食べて生きる・安全に暮らす
→ 働く意味:「生存と安定のため」
段階2(中位層):社会的・承認欲求
→ 仲間とつながり、社会の一員として認められる
→ 働く意味:「つながりと承認のため」
段階3(上位層):自己実現欲求
→ 自分らしさを発揮し、価値を生む
→ 働く意味:「自己実現と他者貢献のため」
ここで、前野隆司教授の「幸せの4因子」が再び登場する。
- 「やってみよう!」=挑戦と成長
- 「ありがとう!」=感謝とつながり
- 「なんとかなる!」=楽観と回復力
- 「ありのままに!」=自分らしさ
これらを実践できる働き方こそ、“真に自分のための仕事”だ。
4. 浅いサーフィン型 vs 深く続くダイビング型
働き方には、大きく2つのスタイルがある。
どちらが正解かは君たち次第だが、リスクと向き合う必要がある。

| 項目 | サーフィン型(Surfing) | ダイビング型(Diving) |
|---|---|---|
| 特徴 | トレンドに乗り、短期で成果を出す | 一分野を深く掘り下げ、専門性を磨く |
| メリット | 変化に強く、新しい挑戦がしやすい | 希少価値の高い専門家として成長 |
| デメリット | 専門性が浅く、継続的成長が難しい | 柔軟性を失うリスク |
| 向いている人 | 多様な経験を楽しむタイプ | 集中力と継続性を重視するタイプ |
理工系学生の多くは、もともとダイビング型に適性がある。
なぜなら:
- 論理的思考力が高い
- 継続学習に強い
- 専門知への敬意がある
しかし現代は、「T字型人材」「π型人材」が理想とされる。
- 縦軸(|):深い専門性(ダイビング型)
- 横軸(ー):幅広い教養・他分野連携(サーフィン型)
🌶️ 「何でもできる器用な人」と「誰にも負けない専門家」。
君たちは、どちらの方向に進みたい?
5. 仕事と幸せのつながり:成長・感謝・自分らしさの実現
仕事が幸せにつながる3つのメカニズムを、心理学・行動科学の知見にもとづいて解説する。きれいごとではなく、データと実務感覚を両立させた話だ。
メカニズム1:成長による幸せ(Growth Happiness)
心理学者ミハイ・チクセントミハイのフロー理論では、人が深い没入と満足を感じる条件として、概ね次が挙げられる。
- 明確な目標がある
- 即時のフィードバックが得られる
- スキルと課題の難易度が釣り合っている
理工系の仕事は、この条件を満たしやすい。
- プログラミング:動作確認やテストで即時に結果が返る
- 実験・研究:仮説検証のサイクルで学習と改善が回る
- 設計・開発:完成物・ユーザー反応を通じて達成感を可視化できる
メカニズム2:感謝による幸せ(Gratitude Happiness)
「誰かの役に立っている実感」は、主観的幸福感の上昇と関連があることが、心理学研究で繰り返し示されている。感謝介入(感謝日記・感謝の振り返り等)は、
- 幸福感の上昇
- ストレス低下の自覚
- 睡眠の主観的質の改善
などに資する傾向が報告されている(効果量・持続期間は研究により幅あり)。
理工系の仕事は「感謝の見える化」をしやすい。
- 医療機器開発:患者・医療者のアウトカム改善に直結
- 環境技術:地域・地球環境の負荷低減に貢献
- AI・IoT:日常の不便の解消と利便性向上
- 技術サポート:ユーザーの困りごと解決が直接「ありがとう」につながる
メカニズム3:自分らしさによる幸せ(Authenticity Happiness)
価値観と行動の一貫性(自分らしさ)が実感できると、エンゲージメントや創造性が高まり、離職意向は相対的に下がりやすいと示す研究がある(効果には個人差)。
理工系学生が持ちやすい動機・特性――
- 論理的思考を使いたい
- 問題解決に取り組みたい
- 新技術を学び続けたい
- 社会に価値を提供したい
――と仕事が噛み合うほど、幸福度のドライバーが強化されやすい。
📊 現実チェック
キャリタス関連の2024年調査では、入社1年目で「想定以上に成長」「想定どおりに成長」を合算して63.8%。約3人に2人が一定の成長実感を得ている。一方で、実感できない層も存在する点は押さえておきたい。
🌶️ 君たちの専攻や仕事の選び方は、「自分らしさ」と整合しているか?
過去の選択とこれからの選択は、同じでなくていい。積み重ねを再設計し、強みに変えていこう。
6. 働く場の選び方:組織・スタートアップ・フリーランス
どこで働くかは、どう働くかと同じくらい重要。理想像だけでなく、現実面も直視して選ぼう。

大企業・組織(Corporation)
メリット
- 安定的な収入:月給・賞与・各種手当
- 研修制度の充実:体系的スキルアップ機会
- 大規模プロジェクト:個人では扱えない規模・社会的影響
- ネットワーク:大手同士・取引先との接点
- 社会的信用:ローン・クレジット審査で有利になりやすい
デメリット
- 意思決定の遅さ:稟議・承認プロセス
- 裁量の限定:役割分業が明確で、変更に時間
- 変化への鈍さ:組織慣性・レガシー資産
- 年功序列の残存:成果と昇進・昇給の連動度に幅
スタートアップ(Startup)
メリット
- 高成長の可能性:事業拡大とともに報酬・役割が拡大
- 大きな裁量:意思決定に近く、提案が実装されやすい
- 最新技術に接する:フロンティアで学べる
- オーナーシップ:ストックオプション等の機会
- スピード感:学習と実装の高速反復
デメリット
- 事業リスク:失敗・縮小の可能性(フェーズ依存)
- 収入の不安定性:資金調達・業績に左右されやすい
- 長時間化リスク:少数精鋭ゆえの負荷集中
- 福利厚生の薄さ:制度設計の発展途上
- メンター不足:育成に割ける余力が限られることも
フリーランス(Freelance)
メリット
- 自由度:時間・場所・案件選択の主導権
- 上限なき報酬ポテンシャル:市場価値×営業力
- 多様な経験:複数業界・複数企業に関与
- 税務上の裁量:経費計上による最適化
- 学習の強制力:市場に合わせ自己研鑽が続く
デメリット
- 収入変動:案件次第でブレが大きい
- 社会的信用の壁:与信で不利になりやすい
- 非コア業務負担:営業・契約・経理の自己完結
- 孤立リスク:同僚不在・ケアの不足
- 自己管理の難易度:健康・時間・学習の全責任
- ダウンタイム直撃:病気・怪我=即収入減
- 復帰難易度:自由度に慣れると組織復帰が難しくなる場合
- 社会保障の薄さ:公的制度は自前手当が基本
📊 現実データ(示唆)
働き方別の「総合満足度」は、個人の価値観・裁量の度合い・人間関係に強く依存し、単純な優劣はつけにくい。自分にとっての評価軸を明確化してから比較しよう。
🌶️ 「安定」と「自由」を両取りしたいなら?
キャリアの段階設計(フェーズ戦略)と収入ポートフォリオ(副業・資産形成)の併用で設計可能だ。
7. 働く動機のタイプ分け:自分の動機パターンを知る
心理学者エドワード・デシ、リチャード・ライアンの自己決定理論(SDT)を手がかりに、動機の段階を把握し、外発→内発へと質を高めよう。

外発的動機(Extrinsic Motivation)
1. 外的調整型(External Regulation)
- 動機:報酬獲得・罰回避
- 特徴:「お金のため」「怒られないため」
- リスク:報酬が消えると動機も消える
2. 取り入れ調整型(Introjected Regulation)
- 動機:自尊心維持・周囲評価
- 特徴:「認められたい」「恥をかきたくない」
- リスク:他者評価への依存、燃え尽きの懸念
3.同一化調整型(Identified Regulation)
- 動機:個人目標との整合
- 特徴:「将来目標のため」「スキルアップのため」
- リスク:目標達成後の反動で動機低下も
内発的動機
4.統合的調整型(Integrated Regulation)
- 動機:価値観と行動が統合
- 特徴:「自分らしさの表現」「人生の一貫性」
- 強み:持続性・ストレス耐性
5.内発的動機型(Intrinsic Motivation)
- 動機:活動それ自体が楽しい
- 特徴:「やっていて面白い」「時を忘れる」
- 強み:高い創造性・最良のパフォーマンス
理工系が狙いたいのは、統合的調整+内発的動機の組み合わせ。
ただし、多くの場合は外発で始まり、深く取り組む中で内発が芽生える。
研究室での長時間実験や開発プロジェクトで、最初は「単位・就活のため」でも、いつの間にか「面白い」に変わる経験――それが内発への移行だ。
つまり、やり始めて本気で取り組むからこそ、やりがいと面白さが見えてくる。最初から完璧な動機は不要だ。
実務Tip
- 志望動機は「自分の価値観×相手の仕事状況の合致」で語る
- 入社後も、定期的に動機の棚卸しを行い、質を高める
📊 セルフチェック(動機タイプ診断の着眼点)
- 今の(または想定する)仕事に、どんな気持ちで向き合っている?
- 報酬や評価がなくても、続けたいと思える時間があるか?
- その仕事を人に説明する言葉は何か?(価値観語/報酬語)
- 仕事中の自分を想像したとき、どんな感情が湧く?
この答えは時間とともに変化してよい。大切なのは、変化に気づき、より深い満足へ微調整し続けることだ。
🌶️ 10年後の自分は、どんな動機で働いていたい?

まとめ
「働く」の核は「端(はた)を楽にする」=他者貢献。
理工系の君たちには、技術で課題を解く力がある。ただし、それが幸せにつながるかは、動機の質・働く場・誰のために働くかで大きく変わる。
2024年時点の各種調査でも、成長実感や満足度は個人差が大きい。表面的条件だけでなく、自分らしさ・貢献実感・学習機会という内側の評価軸で選ぼう。
本当の幸せは、自分らしく、誰かの役に立ち、成長し続けられる場所に宿る――それが「端を楽にする」という原点だ。
参考文献
- 日本経済新聞「『働く』とは他者を楽にすること」(2013/9/17)
- 株式会社ディスコ「入社1年目社員のキャリア満足度調査」(2024年3月)
- 前野隆司『幸せのメカニズム』講談社現代新書(2013)/慶應義塾大学 前野研究室「幸せの4因子」関連資料
- Mihaly Csikszentmihalyi, Flow(関連邦訳:『フロー体験 喜びの現象学』世界思想社, 1996)
- Edward L. Deci & Richard M. Ryan, Self-Determination Theory(SDT関連論文)
- 内閣府「参考データ集 ― 理系学生の就職・満足度関連」
- 文部科学省 科学技術・学術政策研究所「理工系学生の進路動向」(2024)
- マイナビ「2024年卒 大学生活動実態調査」(2023年10月)
- 感謝介入と幸福に関する大学研究(例:Emmons & McCulloughほか。効果量・持続期間は研究により差異)
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